はじめに

経営者の中には個人事業と法人を同時に並行している方もいます。これにはどういう理由があるのでしょうか?

同時並行するメリットやどのような留意点があるのかを解説していきます。


個人事業と法人の二刀流とはどういうこと?

個人事業と法人の二刀流とは、個人事業として事業を行いながら、従業員を雇わず株主兼取締役の1人で事業を行う、個人事業のような小さな規模の会社「マイクロ法人」を設立し、法人の役員としても事業を行っていることをいいます。

筆者は法人を設立し、法人の代表者となっていますが、執筆や講師業などで依頼元との契約の都合で一部個人事業でしか受けられない業務もあるため、個人事業と法人を並行する二刀流の状態となっています。

個人事業とマイクロ法人の二刀流で並行するメリットとしては、個人事業主の税金の仕組みと、法人の役員の税金の仕組みを使うことで節税、社会保険料の節約があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

社会保険料のメリット

まず、社会保険料のメリットについて解説します。

法人の代表者は、報酬額が少なくても社会保険に加入することができます。

例えば、報酬の月額が6万3000円未満のひとは一律で厚生年金保険料、健康保険料ともに最低水準の金額となります。社会保険料は会社と個人で折半しますので、折半後の保険料は健康保険料2,845円(40歳未満のひとの場合)+厚生年金保険料8052円=1万897円となり、会社負担と個人負担分の合計で2万1794円、そこに子育て支援に充てられる税金、子ども・子育て拠出金の316円が追加され、月の社会保険料は2万2110円となります。

年間で計算すると26万5320円です。

参考:けんぽ協会 令和4年3月分からの健康保険、厚生年金保険料額表(東京都)

対して、個人事業主の場合は、国民年金保険に加入し、所得に関係なく一律で月額約1万6500円、年間で約19万8000円となります。

国民健康保険料は一般的に下記のように計算されます。

計算式:(1)所得割(所得に掛かる金額)+(2)均等割(国民健康保険加入者に一律で掛かる金額)+(3)平等割(世帯で一律にかかる金額)

練馬区在住で所得500万円、30歳男性の場合では約46万円が掛かります。国民年金保険料19万8000円と、国民健康保険料46万円を合計すると65万8000円になります。

法人で社会保険料の最低料率で報酬を設定した場合の社会保険料合計額26万5320円と比較すると、なんと39万円以上も社会保険料の差が発生することがわかります。

また、単に社会保険料が安くなるだけではありません。

個人事業主のままでは将来公的年金を受け取る際には国民年金部分しか受け取れません。ただ、法人では厚生年金に加入するため、厚生年金の受給資格も得られます。

しかも、厚生年金の料率が最低ランクだと国民年金の保険料よりも安くなり、それでいて将来の給付は手厚くなるのです。

わずかではありますが健康保険に加入することにより、働けなくなった場合には傷病手当金を受け取ることもできます。

二刀流にすることで、社会保険料の節約と、社会保障の拡充を同時に実現することが可能なのです。

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