はじめに
自分の銀行口座から他行の銀行口座にお金を振り込むときには、1回につき数百円の振込手数料がかかります。でも、この振込手数料、今後はもっと安く済むかもしれません。大手銀行が中心となって設立した「ことら(COTRA)」が手がけるスマホ送金の新サービス「ことら送金サービス」が2022年10月11日よりスタートする予定だからです。
今回は、ことらのしくみやサービスを確認しながら、どんなときにことらが便利なのか、ユーザー視点でのメリットを考えてみましょう。
振込手数料が無料に? ことらの3つの特徴
ことらは、スマホのアプリを通じて、個人間送金できるサービスです。ことらは、少額の送金を表す「小口トランスファー」という言葉を略したもののだそうです。
現状、銀行口座間で送金などのお金のやりとりをする際には、「全銀システム」(全国銀行データ通信システム)という、銀行間をつなぐネットワークが利用されています。しかし、銀行が全銀システムを使うときには、手数料(銀行間手数料)がかかります。利用者が他行にお金を振り込む際の振込手数料は、この銀行間手数料をベースにして決まるため、どうしても高くなってしまうのです。
ことらは全銀システムとは別の決済システムを利用し、スマホアプリを通じて、10万円以下のお金をこれまでよりも簡単に他の人に送れるようにすることを目指しています。
ことらの特徴は、大きく分けて次の3つあります。
ことらの特徴1:携帯番号やメールアドレス宛に送金できる
現状の銀行振込では、振込先の銀行口座の銀行名・支店名・口座番号といった情報がわからないと送金することができません。しかし、ことらでは、口座番号だけでなく、携帯番号やメールアドレス宛にも送金ができるようになります。相手の銀行口座がわからなくても、手軽に送金できる、というわけです。
ことらの特徴2:振込手数料が無料になる場合も
全銀システムの手数料は、2021年10月に引き下げられました。それに合わせて、現状の銀行振込の振込手数料も、多少値下がりしました。しかし、値下がりしたといっても、やはり数百円はかかります。
その点、ことらの振込手数料は「金融機関ごとに決める」ことになっていますが、すでに三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行のメガバンク3行はことらによる振込手数料を無料にする、としています。他の金融機関でもこれに合わせて無料にするところが多いと考えられます。
ことらの特徴3:相手のアプリを気にせずに送金できる
現状、銀行のスマホアプリは銀行ごとに異なります。しかし、ことらを利用できるアプリ同士であれば、相手のアプリが自分のアプリと違っても送金できます。現状対応が発表されているアプリはBank Pay、J-Coin Pay、Wallet+といった銀行系のアプリばかりですが、将来的にはQRコード決済アプリとの間でも送金できるようにすることを目指しています。
送金サービスは他にもある
ことらがあれば、スマホで簡単にお金を送金できます。ことらによると「お小遣い・お年玉・精算・仕送り・割り勘・家賃口座への振込など、いろんなシーンでお金を送れます」とのことなのですが、お金を送れるサービスは、ことらの他にもあります。
ことらとよく似ているのが、個人間送金アプリの「pring(プリン)」です。pringでは、pringのユーザー間で送金ができます。1日に送金できる金額の上限は50万円まで。送金手数料は無料です。相手のスマホ画面に表示したQRコードを読み取って送金したり、pringのIDや電話番号で送金相手を検索したうえで送金したりすることができます。
また、多くのQRコード決済アプリでも個人間送金サービスがあります。たとえばPayPayでは、PayPay残高を相手に送ることが可能です。送れる金額の上限は過去24時間で10万円、過去30日間で50万円まで。PayPay残高の送金に手数料はかかりません。
pring同様、相手のスマホに表示させたPayPayのQRコードを読み取って金額を入力するだけで送金可能。携帯番号やPayPay IDがわかれば、その宛先にPayPay残高を送ることもできます。さらに飲み会などで役立つ「わりかん機能」もあります。