はじめに

もう一つの隠れた問題点

実は、今回のケースではもう1つの問題点をお伝えしました。それは、母が亡くなった時の相続手続です。母が亡くなった場合には、まさこさんと兄で遺産分割協議をする必要があります。しかし、兄の障害が悪化して判断能力がなくなっていた場合、兄との遺産分割協議ができません。このような状況を避けるため、母にも遺言書の作成をお勧めしました。

遺言書は「誰に」「何を」遺すのかを決めるために作成するケースが多いですが、それだけではなく、遺言書の内容を実現するための「執行者」を指定することができます。この執行者を指定することにより、相続人に代わって手続きを行い、遺言書の内容に従って財産を分配することが可能になるのです。母へ説明を行ったところ、遺言書を作成したいとのことで、兄の対策を併せて進めていくこととなりました。

相続の問題や解決方法は十人十色

相続の対策は、どうしても法律上の観点から「どうしたらよいのか」と考えてしまうことが多くあります。しかし、本当に大切なことは「どうしたら大切な人が笑顔で過ごしていけるのか」です。今回のケースのように、現在の生活状況からすると必要でないことであっても、みんなが安心して過ごしていくために必要なことは多くあります。この「真の問題点とは何か」を明確にするためには、相談者の声に耳を傾けることが必要です。また、相談者が話をしやすい環境を作る「場づくり」が重要になってきます。相続の問題や解決方法は十人十色です。家族関係、現在の状況、何に不安を感じ、何を解決したいと思っているかをしっかりと聴くことができる専門家へ相談することをお勧めします。

行政書士:藤井利江子

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