はじめに
お客さまに喜んでもらうために、常にさまざまなアンテナを張っておく
営業をしていた頃、お客さまと話していて、いい感じで進んでいたのに、一瞬の表情や言葉から「あ、今、お客さまの気持ちがちょっと後ろ向きになったな」と感じることがありました。
それはたいていお金の話になったあたりか契約の直前に起こります。
この時のお客さまの気持ちはよくわかります。もし私がその時どうしても他に買いたいものがあったら、家を買うためにコツコツ貯めていた貯金を崩さないといけなかったら、数年間お給料も上がっていないのに家賃が上がってしまって頭を抱えていたら、勤めていた会社が倒産して非正規雇用になっていたら、とか、もう想像が止まらないのですが、お金の事情って多かれ少なかれ人それぞれにありますよね。
営業的には、「そんな相手の事情は関係ない」「きっと出せるお金はある」「無理なら借りてくればいい」という発想になったほうがもっと強めクロージングをかけることができます。だから、さっき書いたように「お客さまの気持ちはよくわかります」なんて悠長なことを言っていたらもうダメなんです。
けれど、そういう強い営業は搾りとれるだけ搾りとれとばかり、お客さまを「使い捨て」してるみたいに感じます。
もちろん、私だって「お金を借りてでもやったほうがいい」と判断すればそういうふうに話を進めます。
でもそれって「どうしても欲しい。これが夢だった」というような葛藤を相手の中に感じたときだけなんです。
だから、お客さまがお金の話をしたとたん気配が怪しくなり「ちょっと考えます」など断りの言葉をおっしゃったら「そうですよね、やっぱり決断には勇気がいりますよね」とお客さまに共感したほうがいいのです。その上で、
お金があったらどうしたいのか?
本音はどうなのか?
本当に必要なのか?
などを一緒に考えていく方向に持っていく。そうするだけでちょっと空気が変わってきます。
そういう寄り添いがあってこそ、お客さまの本音が聞けるようになるのです。本音を聞き出せる関係性を築ければ、勇気を出して決断してくださるか、今は無理でも必ず戻ってきてくださるという前向きな結果につながりやすいです。それなのに強引に流れをもとに戻そうとして「いや、もう絶対にお勧めです」と焦って売ろうとするのはむしろ逆効果です。
「買わされそう」という雰囲気を、お客さまは敏感に察知しますし、どんどん警戒されてしまいます。
買う買わないではなく、お客さまにとって今ここで先行投資することが求める未来に近づけることかどうか?今抱えるお客さまの問題を解決できるのかどうか?などを考えて提案をします。どんな未来を選ばれるかはご本人次第です。