はじめに

警察庁が毎年3月に出している「生活経済事犯の検挙状況等について」という資料があります。それによると、未公開株、社債、外国通貨の取引、ファンドへの投資勧誘などを装いお金を集める、利殖勧誘事犯に関する相談当事者の年齢別構成に、ちょっとした変化が見られるようになってきました。

通常、資産運用詐欺の被害者というと、高齢者のイメージが強いと思います。前出の豊田商事事件でも、投資ジャーナル事件でも、あるいはその後に起った「オレンジ共済事件」、「和牛オーナー商法事件」などにしても、被害者の多くは高齢者でした。

ところが利殖勧誘事犯に関する相談当事者の年齢別構成を見ると、20代から40代の相談者が増えてきているのです。

ちなみに2016年当時の数字では、20歳未満が0.2%、20代が3.8%、30歳代が4.0%、40歳代が8.1%で、65歳以上が57.5%だったのですが、2021年の数字を見ると、20歳未満が0.8%、20代が18.3%、30歳代が18.3%、40歳代が18.4%で、65歳以上が15.2%、となっているのです。

この変化はかなり劇的です。特に65歳以上の相談者は激減といっても良いでしょう。逆に、40歳代以下の比率の合計は、2016年の16.1%から、2021年には55.8%にまで上昇しました。

恐らく、20歳代から40歳代は、老後不安から資産を増やさなければならないという意識が強いものの、そこに付け込まれて怪しい投資商品、あるいは情報商材を勧誘され、本当に大丈夫なのかどうかが不安になって相談する、というケースが増えているのではないかと思います。

この数字では、「実際に契約した後に不安になって相談した」のか、「まだ契約していないけれども、大丈夫なのかどうかを確認するために相談したのか」のどちらかが分かりませんが、ひとつ言えるのは、過去において行われた資産運用詐欺で、犯人が摘発された後、被害者のお金が100%戻ってきた試しは一度もない、ということです。つまり、お金を渡したら終わりなのです。

特に最近の資産運用詐欺と思しき連中の手口を見ると、なかなか巧妙です。だからこそ、真贋を見極める目が求められます。では、どういう点でそれを見極めれば良いのでしょうか。

次回以降、私が過去において実際に取材した資産運用詐欺事件のストーリーも交えながら、資産運用詐欺に引っ掛からずに済む方法を考えてみたいと思います。

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