はじめに

おととい投開票が行われた衆議院議員選挙は、与党の圧勝に終わりました。これから11月1日の特別国会召集までの間、閣僚人事に関するさまざまな情報が飛び交いそうですが、世界に視野を広げれば、それ以上に注目を集めている人事があります。

米国のFRB(連邦準備制度理事会)の新議長人事です。FRBはアメリカの中央銀行としての役割を担っており、その議長は、日本でいえば日本銀行の黒田東彦総裁にあたります。

実は、FRBの新議長人事は日本の経済や金融にとっても“対岸の火事”ではなく、むしろ日銀の総裁人事と同じくらい、もしかするとそれ以上に影響の大きい、注目すべきニュースなのです。その理由と新議長人事の行方について考えてみましょう。


議長人事に注目すべき2つの理由

現在のFRB議長であるジャネット・イエレン氏は71歳の女性で、2014年に前任者のベン・バーナンキ氏の退任に伴って議長に就任し、2018年2月まで務める予定となっています。ちなみに、10月25日に73歳になる日銀の黒田総裁の任期は5年間で、来年の春までとなっています。

FRBの議長は大統領が指名し、議会が承認することになっています。このため、トランプ大統領の意向が強く働くと考えられていて、数日中にトランプ大統領が新議長を指名するのではないか、という観測が強まっています。

新議長人事が注目されている理由は2つあります。

1つは、FRBの議長は今後数年間の米国の金融・経済の方向性を決める重要な役職であり、米国の景気や株価の動向に大きな影響を与えるためです。もう1つは、米国の景気や株価は為替レートや資源価格にも影響を及ぼす可能性が高く、日本をはじめとする他の国の株価や物価動向にも少なからず影響があると考えられるためです。

つまり、議長人事の結果によって、為替レートが円高に振れるか円安に振れるか、日本の株価が上がるか下がるか、ガソリン価格が上がるか下がるか、輸入品の価格が上がるか下がるかなど、私たちの仕事だけでなく、日常生活にも大きな影響が及ぶ可能性があるのです。

タカなら強気、ハトだと慎重

FRBの新議長が株価や為替レートにどんな影響を与えるかを判断するためには、新議長が金融政策(中央銀行が行う経済政策)に対してどのような考え方を持っているのかを理解する必要があります。その際、「タカ派」か「ハト派」か、という表現を使うことがあります。

「タカ派」の議長は、物価や景気の動向に対して強気で、現在の米国のような景気拡大局面では、より早めに金利を引き上げる方向を選択する可能性が高いと考えられます。一方で「ハト派」の議長は、景気動向に対して慎重な見方をすることが多く、景気拡大局面であっても金利の引き上げはゆっくりと慎重に進める可能性が高いと考えられます。

日本銀行の黒田総裁は、マイナス金利政策を導入するなど積極的な金融緩和を進めてきており、「ハト派」に属するといわれています。

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