はじめに

11月4日に発表された米国の雇用統計によれば10月の非農業部門雇用者数は前の月より26万1000人増加しました。19万人強を見込んだ市場予想を上回りました。平均時給は前月比0.4%増と、前月(0.3%増)から伸びが加速しました。市場予想は0.3%増でした。

ただし、雇用は強いように見えて、雇用の増加ペースは着実に鈍化しつつあります。26万1000人という増加幅は2021年以降で最小です。


米国の労働市場は減速傾向

雇用動態調査(JOLTS)によると非農業部門の求人件数は8月に大きく減少した後、9月には再び増加に転じたもののピークには及びません。求人件数のピークは2022年3月でした。時間当たり賃金の前年同月比伸び率のピークも3月、失業保険申請件数の最低も3月。こう見ると、労働市場の過熱のピークは3月だったと考えられます。

そこから大幅利上げが続いてすでに半年が経過しています。企業の動きとしても人員整理のニュースが増えてきました。アマゾン・ドット・コムは3日、増員につながる新規採用を停止すると発表。配車サービスのリフトは全従業員の13%に相当する約683人を削減すると明らかにしました。調査会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスの3日のリポートによれば、10月に発表された企業の人員削減は前年同月比48%増加。今後さらなるレイオフが見込まれているといわれます。いずれ雇用統計にも減速感がより鮮明に出てくるでしょう。

減速感を強める米国経済の最後の砦であった労働市場も、いよいよ悪化してくるとなれば、米国景気は景気後退に陥る可能性が高まります。

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