はじめに

「見送る側」と「見送られる側」の礼儀正しい「別れ際」

「おはようございます」「こんにちは」といった挨拶が、人と会うときの礼儀の最初のポイントだとするなら、別れ際は、最後の礼儀のポイントです。

なぜなら、せっかく礼儀正しく接していたのに、最後が無礼になってしまうと、相手への印象が悪いものにひっくり返ってしまうからです。

たとえば、自分の勤める会社で取引相手との打ち合わせを終えたら、ビルの出口、またはエレベーターに乗るところまで送っていくのが礼儀です。そこまで歩いていく間はリラックスしたムードになりやすく、個人的な情報交換をしたり会議室では聞けなかった本音を漏れ聞くこともあったりするので、相手とより親密になれるチャンスがあります。

また、外まで見送るときは、相手が車であれ徒歩であれ相手が見えなくなるまで見送るのが「見送る側」の礼儀です。

このとき、逆の立場である「見送られる側」にもマナーがあります。

「そこから先は曲がって行く」という角まで来たら、「振り返って一礼」します。もし、振り返りもせずにさっさと行ってしまったら、見送った側は待ちぼうけを食ったことになります。お互いの気遣いにお互いが応えるのが、礼儀正しい「別れ際」なのです。

ただし、外まで見送るのが必ずしも礼儀にかなっているかというと、そうとも限りません。ビルの外がかなり遠いところまで曲がり角のない一本道だった場合、どこで「振り返って一礼」すればいいのかわからなり、お互いに気まずい思いをします。

「相手に良い気分になってもらおう」という気持ちを大事にするなら、礼儀をマニュアル的に考えないことも大切です。

会議や取引先との打ち合わせ、食事や接待、上司と部下との会話、謝罪など、ビジネスシーンでは礼儀が大切になる場面が多いですが、プライベートでも、友人や家族、恋人と良い関係を続けるためにも、礼儀は欠かせません。

相手が誰であれ、大切なのはレディファーストならぬ「相手ファースト」の気持ちです。その気持ちがあれば、無礼になったり慇懃無礼なったりすることもなくなるはずです。

なぜか好かれる人の「ちょうど良い礼儀」 山﨑武也 著


「礼儀」はなかなか教わる機会がないが、適切な「礼儀」で印象は大きく変わる。「接待する人よりも先に行かない」「会話中に腕時計は見ない」「話をスマートに切り上げる方法」など、気が利く人、かわいがられる人がさりげなくしている適切な礼儀をひも解く。

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