はじめに

今回の決算発表も無事終了しました。前回に引き続き目立ったのは決算発表時に自社株買いを公表した企業の多さです。自社株買いについては2022年6月13日配信の記事をご参照ください。

11月18日(金)の日経新聞によると、上場企業の2022年の自社株買いが過去最高となる見通しとの報道があります。記事によると11月中旬までの取得枠の設定が9兆円を超え、年間ベースの過去最高(2006年の8兆5,000億円)をすでに上回ったとありました。


自社株買いを行う企業が増加している背景

自社株買いを行う企業が増加する理由として、コーポレートガバナンス強化が挙げられます。資本効率改善への意識が浸透し、米国のように自社株買いを機動的に実施する企業が増えています。また、企業業績に対する自社の自信と株価の割安感を払拭したい気持ちがあるように感じます。

今回は158社が自社株買いを行うとし、約20社が100億円超える取得金額です。自己株式取得予定株数の上限が発行済株式総数に対する割合が高い企業、取得金額が大きい企業をいくつか挙げてみます。

目立ったのは三井住友FG(8316)の2,000億円、三菱東京UFJ(8306)トヨタ(7203)NTT(9432)が1,500億円、三井物産(8031)が1,400億円、三菱地所(8802)が1,000億円と、6社が1,000億円規模の取得金額を設定しました。

なかでも三井住友FGは自己保有株を除く発行済株式総数の4.4%にあたる6,100万株(金額では2,000億円)を上限に自社株買いを実施するとしていて、11月15日(火)から約半年間で行う予定としています。また株式消却の発表もしていて、今回の自社株買い取得株数を2023年6月20日(火)に消却の予定です。同時に通期の最終利益を上方修正した事や増配も発表した事で、株価は年初来高値を更新しています。

また、三井物産も11月2日(水)から来年の2023年2月28日(火)の短期間に発行済株式総数の3.8%にあたる6,000万株(金額では1,400億円)を上限に自社株買いを実施するとしています。そして株式消却の発表もしていて、今回の自社株買い取得株数プラス1,000万株を加えた株数を2023年3月13日(月)に消却する予定です。同社も同時に発表した決算発表が最終利益を上方修正する見通しとなった事や増配が好感され、上場来高値を更新する場面も見られています。

ここで株式消却について簡単に説明します。

株式消却とは株式を発行した企業が市場に出回っている自社の株式を自ら買い取り、消滅させることです。買い取った株式は、資本準備金や剰余金などを取り崩して消却します。自社株を消却するメリットは、発行済み株式数が減り、1株あたりの価値が高まることです。自社株の消却は投資家からポジティブに受け止められる傾向があり、自社株の消却によって株価が上昇する可能性が高いです。しかし資本金を取り崩して行う場合は減資となりなります。

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