はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は深野康彦氏がお答えします。
ファイナンシャルプランナーの方たちはどのようにお金を運用されているのですか? 成功談ではなく、失敗談を教えてください。
(匿名希望)
深野 :私のお金の運用スタイルは人様にお話できるような代物ではありません。
なぜなら、商品の仕組みなどでわからないものがあったり、ポジションを持った時の投資家心理はどのようになるのか等々、疑問がわいたときにはすべて身銭を切って投資をしているからです。
ただし、私にも家族がいますので家族には迷惑をかけないように、ライフイベントに合わせてお金を準備することは心がけるようにしています。ライフイベントに合わせたお金の準備とは、資金不足でローンなどに頼らないようにすることです。
年齢が50代となっていますので、かつてに比べてリスクを押さえた資産運用に変えているのは事実です。それでも、同年代と比較すると積極的にリスクを取った運用ではあります。資産配分では、数年前から新興国への資産配分の割合が増えていることでしょう。
また、足元では投資信託やETFを含めた日本株への資産配分割合が増えているので、日本株の資産配分を減らそうと考えています。来年まとまったお金が必要なライフイベントを控えているため、減らした(売却した)分は定期預金などへ回そうと考えています。
歳を重ねるごとに保守的な運用に変えていく
年齢別の資産運用の仕方については、現役世代である限りは運用スタイルには大きな違いはないと思います。
現役世代はどちらかといえば、資産という山を高くしていくというストック重視の運用をするからです。したがって、年齢別に運用スタイルを変えるというより、資産配分を年齢を重ねるごとに変えていくべきでしょう。歳を重ねるごとに、株式への配分を減らし債券などを増やしていく保守的な運用にしていくべきだと思います。
ちなみにリタイア後の資産運用は、資産という山を高くしていくストック重視の運用より、これまで築いてきた金融資産を運用しながら使っていくというキャッシュフロー重視の運用に変えていく必要があります。
バブル崩壊後、株券が“紙切れ”になった経験も
これまでの失敗ですが、大きな声で言えませんがたくさんあります。
先に述べたように、疑問があれば身銭を切るスタイルなので、先物取引(商品含む)、オプション取引以外はほとんどの取引をこれまで行っていきました。このため失敗は数知れずという状況なのです。
いくつかご披露すると、バブル崩壊後に投資していた株式が『紙切れ=倒産』したことがあります。
紙切れといえば、ワラントを紙切れにしたこともあります。ワラントとは「新株引受権」と呼ばれる有価証券のことです。
そのほか、FX取引ではストップロス取引を入れるのを忘れて寝てしまい、朝起きたらポジションが閉じていた(強制決済された)こともあります。
投資信託ではアジア株ファンドが約2倍になったにもかかわらず、リーマンショックで買値に戻ってしまったとか、数千円の損で済みましたが、繰り上げ償還になった投資信託もありました。
最近では、立場上、個別株投資を控えているため、消費者金融株や不動産株の初動を見ていたのに指をくわえて見ているだけというのは残念でしたね。
年齢やライフイベントを見据えるならば、徐々に債券への資産配分、言い換えれば保守的な運用に変えていくべきなのでしょう。