はじめに

65歳定年を迎えた後、免許を返納するかどうか悩まれるひとがたくさんいます。通勤の足として、子どもの送迎や買物など、自動車が必要不可欠な地域の場合、免許返納は大きな決断といえます。自動車を運転し続けるくらしと、免許返納し自動車のないくらしとの経済的な比較を踏まえ考えます。


自家用車普及台数の推移は?

一般社団法人自動車検査登録情報協会の調査によると、令和4年3月末現在、自家用乗用車(登録車と軽自動車の合計)の全国の保有台数は6,166万台。昨年6170万台より4万台減少しています。保有台数は減少したものの、世帯数は5,950万世帯から5,976万世帯に増加しているため、1世帯あたりの普及台数は1.032台と昨年の1.037台からわずかに減少しています。

日本の人口は2008年の12,808万人をピークに減少傾向にあり、2022年6月のデータでは12,510万人になっています。反対に世帯数は、2008年の5,232万世帯から増加傾向で2022年は5,976万世帯まで膨らんでいます。核家族化が進んだことと、婚姻率の低下・離婚率の増加などで独身世帯が増えたことも要因といえましょう。

都道府県別にみると、1世帯当たり1台を割っているのは、北海道・千葉・埼玉・兵庫・京都・神奈川・大阪・東京で、特に東京は1世帯当たり0.421台とダントツに少なく、交通網の発達とカーシェアリングの普及などが車離れに拍車をかけていると思われます。

車離れが進む地域がある反面、1世帯に1台以上保有の地域がほとんどであることをみると、日本において自動車はくらしに必要なツールとなっていることがわかります。高齢となり、免許返納を考えるにあたり、まずは経済的なメリット・デメリットを考える必要があるでしょう。

自動車保有にかかる費用

自家用自動車は、時間に関係なく使用でき、ドアツードアでどこにでも行ける便利な交通手段ですが、高額な自動車購入費用に加えて、維持するためにかなり費用がかかります。免許返納を考え始める65歳頃を想定して維持費用を計算してみます。

まず、自動車を保有するには、民間の自動車保険加入が必要です。

対象自動車:自家用普通乗用車 マークX 初度登録 2012年10月
自動車保険補償条件:対人・対物 無制限補償 人身傷害 5000万円 傷害一時金倍額払特約付帯 車両保険一般補償75万円 弁護士費用特約付帯
運転者の条件:夫婦のみ補償限定 35歳以上補償 等級:20等級

このような条件で、年間保険料は約65,000円。長く民間保険に加入されていれば、割引等級が進み、多くのひとは高い割引率をうけています。車種により保険料はかなり違ってきますが、車両保険を付帯してもこのような条件でしたら5,000円/月程度の負担で済むことになります。

自動車保有には2年に1度車検を受ける必要があります。車検は国が定める検査で保安基準が満たされているか確認し、確認できたクルマには自動車検査証が交付され、公道を走ることができます。法定費用(重量税、自賠責保険料、印紙代)と点検費用、代行手数料、その他修理が必要な場合は整備費用などもかかります。購入から年数を経過した車では、費用がかさむ場合もあります。重量が2000㎏以下の普通乗用車の法定費用は約55,000円、その他費用を含め10万~14万程度の準備が必要です。1年に換算すると5万~7万円というところです。

走行するにはガソリン代は当然かかります。燃費や走行距離により違いますが、退職後通勤に使用せず、日常生活での使用であれば、5,000円/月程度の準備で間に合うでしょう。

車を持つには駐車場も必須です。自宅敷地内に置ける場合を除き月額の駐車料金がかかります。車1台分はアパートの家賃に含まれる地域がありますが、共働きで2台持ちの場合1台分は有料になります。駐車料金は地域によりかなりの差があります。敷地の整地、屋根の有無、水道の有無、雪国では雪対策の有無など条件によっても料金は変わりますが、月額1万円は必要でしょう。

自動車を長持ちさせるために、定期的なオイル交換、点検も必要となります。なかでもタイヤは消耗品で、摩耗したタイヤは事故の元ですから、定期的な交換が必要です。特に雪国の場合スタッドレスの冬タイヤは夏タイヤに比べゴムが柔らかく、摩耗しやすいので、5年目以降の使用は推奨されていません。車種により違いますが、国内メーカーの商品で約2~3万円です。

年間で考えると、以下のような計算になります。
・民間自動車保険料65,000円
・車検代60,000円
・ガソリン代60,000円
・駐車場代10,000円
・点検・タイヤなど、その他費用15,000円
合計210,000円

その他にも車の修理費用や買換える購入費用などを考えると、自動車保有にはかなりの費用がかかっていることがわかります。

収入はあるのになぜかお金がたまらない…無料FP相談で不安を解消しましょう![by MoneyForward HOME]