はじめに

2022年の暗号資産市場は歴史的なインフレを前に各国が金融引き締めを加速するなか株式市場とともに下落トレンドが続きました。暗号資産の大きな下落によって5月にはテラショック(ステーブルコインの崩壊事件)が起こり、その影響が拡大して11月にはFTXショック(大手暗号資産取引所の破綻事件)が社会的な問題になりました。これらの事件を受けてビットコインの価格も2021年11月の史上最高値から約75%下落しました。

年が明けてからも暗号資産市場ではFTXショックの余波が続いています。直近では暗号資産ブローカーのジェネシスや暗号資産投資信託のグレースケールなどを傘下に持つデジタル・カレンシー・グループの経営状況悪化が懸念されています。他にも暗号資産銀行として知られるシルバーゲート銀行の取り付け騒ぎや、コインベース、フォビグループにおける大規模リストラなどネガティブなニュースばかりが目に入ってきます。

2023年の暗号資産市場はこのまま冷え切った状況が継続するのでしょうか。以下では今年注目すべきポイントとビットコイン相場の今後の見通しについて私の見解を述べます。


暗号資産関連事業者には銀行規制の一部が適用される

これまで暗号資産市場は大規模な事件をきっかけに規制環境が整備されてきました。2014年には日本でマウントゴックス事件(暗号資産取引所のハッキング)が起こり、G7やFATFでの議論を経て、2016年には暗号資産取引所の登録制が導入されました。2018年には同じく日本でコインチェック事件(同上)が起こり、金融庁主導のもと2020年には暗号資産取引所に対して証券規制が一部適用されました。

このように振り返ると今回も事件が起きた米国を中心に暗号資産規制が強化されることは確実です。テラショックとFTXショックで暗号資産関連企業の財務の健全性や情報の透明性が問題になったことから銀行規制に準じた厳しい規制が適用される可能性は高いでしょう。国際決済銀行(BIS)が銀行の暗号資産保有量の上限を定めるなど既存の金融機関を対象に含めた規制が整備されることが予想されます。

国内においても同様に暗号資産規制が強化されることは考えられますが、日本は幸いなことに規制面では海外に先行しており、どちらかといえば、暗号資産の上場審査を緩和したり、信託銀行における暗号資産カストディを認めたり、これまでに厳しくしすぎた規制を見直す方向にあります。政府もweb3(ブロックチェーンを基盤とする次世代インターネット)の事業環境整備を推進する中で、日本が再び暗号資産市場で表舞台に立つチャンスとも捉えられるでしょう。

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