はじめに
事業セグメントごとの成績は?
サイバーエージェントは、おもに3つの事業部で構成されています。
(1)メディア事業
(2)広告事業
(3)ゲーム事業
認知度が高いのは、ABEMAを含むメディア事業、それから「ウマ娘」の大ヒットを生み出したゲーム事業となりますが、実際、売上比率がいちばん高いのは、意外にもインターネット広告事業です。
画像:サイバーエージェント「2023年9月期 第1四半期決算短信[日本基準](連結)」より引用
直近10-12月の売上高をみると①インターネット広告事業の売上高956億円とあり、②メディア事業334億円や、③ゲーム事業409億円と比べて圧倒的に高いのが分かります。
サイバーエージェントの広告事業は、インターネット広告に限定しており、創業当初から中核事業として成長を支えてきました。広告業界の主役は、テレビからネットへと交代しつつあることはわたしたちユーザーも感じています。2021年には、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌の「4マス」媒体の広告費を上回り、ついにインターネットが堂々の1位に。「ネット広告なんて」と下に見られがちだった頃から、ネットだけにフォーカスしていた藤田社長の先見性は、経営者として素晴らしいものがあります。
赤字転落の要因は?
疑いようもなく赤字転落の要因は、④FIFA ワールドカップに対する過去最大の投資です。
もともとメディア事業に対しては、中長期の柱に育てるために大胆投資を行っています。その成果は確実に売上の伸びに表れていますが、営業利益に関しては、毎度毎度の赤字計上。戦略的赤字ではありますが、今4半期の−93億円は、突出しています。
画像:サイバーエージェント「2023年9月期 第1四半期決算短信[日本基準](連結)」より引用
ただし、インターネット中継による決算説明会に登壇した藤田社長は「あくまでも一過性です。慌てないでいただきたい」と訴えました。リスクを取らなければリターンを得られないというのは自明の理。しかし、この大きなリスクテイクは、それ相応のリターンをもたらすのでしょうか?
冒頭でも述べましたが、FIFA ワールドカップ開催中の1週間あたりの利用者数は、過去最高の3,409万人。終了後の2023年第1週の利用者数は、1年前の2022年第1週と比べて約1.4倍の利用者数を保っており、W杯をきっかけにほかチャンネルを利用し始めた人が多いことが分かります。決算説明会で藤田社長は「W杯がすぐ業績に結びつくわけではないが、メディアとしての価値は向上したと感じている」とお話しされています。たしかに「ABEMA、やるな!」と感じた日本国民は多かったように見受けられるので、ブランド力が上がったのではないでしょうか?
ABEMAのマニアックなチャンネルは、一度ハマるとなかなか抜けられない沼を感じます。たとえば、麻雀好きがかぶりつく「熱闘!Mリーグ」。わたしの周りの麻雀女子たちは、こぞって視聴しており、シーズンが始まると週4で見ているそうです。
わたし自身は、地上波ではできないけれど、視聴者がほんとは知りたいことを伝えてくれるメディアという認識を持っています。最初に感じたのは、2019年7月20日に行われた宮迫博之さんと田村亮さんの謝罪会見。ここまで正直に語られる場なんだ、ということに驚きました。それ以来、何かあるとABEMAで会見やっていないかな、とチェックするのが当たり前の行動パターンになっています。