はじめに

株式投資をしていない人でも、一度は耳にしたことがあるであろう「株主優待」。株主優待を実施している企業から自社株を保有している人に配られる、いわばプレゼントのようなものです。

かつては地味な記念品なども多かったのですが、企業も自社株を買ってもらうため、独自色を出した「サービス」や「商品」「割引券・無料券」など、より豪華で魅力的な優待品を打ち出してきています。

そんな株主優待を実施する企業数は2015年に過去最高を記録。質・量ともにかつてないほどの充実を見せていると聞いて、優待のスペシャリストにおすすめの株主優待・銘柄を伺ってきました。

答えてくれたのは、カブドットコム証券株式会社で投資アナリストとして活動し、メディア出演も多数。『勝てる!「優待株」投資』の著者である藤井明代さんです。前後編となる本企画。今回の前編では藤井さんが株主優待の魅力をご紹介。後編では優待マニア・藤井さんが選ぶ一押しの優待銘柄ランキングをご紹介します。


過去最大の株主優待ブームが到来!?

−−株主優待に力を入れる企業が増えていると聞きましたが?

藤井:現在、日本市場に上場している企業は約3800社ありますが、そのうちおよそ3分の1にあたる1200社以上が株主優待を実施しています。直近10年で見れば、リーマンショック後の2年間を除くすべての年で増加の一途をたどっており、その内容もかなり充実してきています。

−−体なぜ、企業はコストをかけてまで株主優待に力を入れているんですか?

藤井:個人株主を増やすため、というのが理由の一つにあげられます。株主優待を受け取るには、その企業の株式保有が必要ですが、企業側はこれが株価に安定性をもたらしてくれると期待しているのです。長期保有をする個人投資家が増えることで、海外投資家の行動に影響されにくくなると考えられます。さらに、他企業からの敵対的買収を防ぐ効果も期待できるので、企業にとってのメリットも多いのです。

−−なるほど。企業のリスク回避になっているんですね。

藤井:はい。そのため、各社が競うように魅力ある株主優待を実施しています。

リスクがつきものの株式投資。危険性はないの?

**−−でも、やっぱり気になるのはリスクです。株主優待を目当てに買付けしても、株価が下がって損した、なんて意味がないですからね。**

藤井:私は多くの企業の株式を分析していますが、外部環境が不安定な今、「優待株」は特に優秀な株式と言えると思います!堅実派にこそおすすめしたいですね。

−−本当ですか?

藤井:株主優待を目当てに株式を買付する個人投資家は、その企業の株式を長期保有する方が多くなっています。また、株主となっている企業の商品やサービスが好きであれば、悪いニュースや報道がでても、株式を手放しにくい傾向があります。

例えば2014年にマクドナルドのサプライヤーの一つである上海の会社が期限切れの鶏肉を混入したチキンマックナゲットを販売して大問題になりました。その後、株価は大きく下落しましたが、2015年の年末には、問題発覚前の水準まで株価を戻しています。これは、マクドナルドのファンが株式を保有し続けたことで、株価が必要以上に下落しなかったことが要因の一つと考えられます。長期で株式を保有する投資家にとって安心感にも繋がります。

ちなみに、個人投資家の比率は、企業の「有価証券報告書」の株式等の状況内にある「所有者別状況」でどなたでも確認することができます。

個人投資家比率の高い企業には、居酒屋の「甘太郎」などを運営するコロワイド(7616)や、牛丼チェーンを運営する吉野家HD(9861)など、身近な企業が挙げられます。どちらも個人投資家比率が75%以上と非常に高い割合を占めています。

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