はじめに

近年起こり始めている深刻な問題

実は、修繕計画の重要性が認知されるようになったのは、約30年前のことです。つまり、言い換えれば、それよりも前に建築されたマンションは、修繕計画といった概念もなく分譲されたケースも少なくなかったことが予想されます。

そして、現在それら築年数が経過してきたマンションは、所有者の高齢化も相まって、修繕計画の合意形成が非常に難しくなってきています。

所有者が福祉施設への入所で連絡が取りにくくなったり、認知症の進行で本人の判断ができなくなったり、所有者が亡くなったことで、マンションとは縁のなかった相続人が新たな所有者となるなど、日が経つほどにその問題解決が手をつけられなくなっていきます。

最たる例として、特にバブル期を中心に分譲された「リゾートマンション」と呼ばれるマンションでは、この傾向が顕著に現れ、修繕計画が進まないだけでなく修繕積立金の滞納等も常態化しています。こういった問題にこれ以上翻弄されたくないマンション所有者が売却処分に殺到しているために、著しい供給過多が生まれ、一見すると立派であっても「1円でも買い手が付かないマンション」も急増しています。


※リゾートマンションのイメージ写真。新築時には数千万円であった住戸が、今は1円でも売れないマンションすら生まれている。

「修繕計画」とどう向き合うべきか

繰り返しとなりますが、筆者はマンションの危険性だけを一方的に主張したいわけではありません。もちろん、マンションの中には、非常に緻密な修繕計画を作ったり、潤沢な修繕資金を貯めていたりするマンションもあり、その場合には長い目で見て安心して購入し、所有し続けることができるでしょう。

一方、万一その計画が甘い場合には、築年数に限らず、この記事で危惧する事態に直面する危険性が非常に高くなります。その意味で、もし購入検討しているマンションにその恐れがあると感じたときは、他の希望条件が全て揃っていた場合でも、購入を見送る英断も必要です。共同所有という性格上、一戸建と異なり、「修繕計画を、自分の力で何とかする」ことは非常に難しいためです。

そして、ここまでご覧頂いた方の中に、もしも「親が分譲マンションに住んでいる」場合には、そのマンションの修繕計画についても確認しておくことをお勧めします。

ある日突然、相続によって自分がそのマンションの所有者になる可能性があるのです。

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