はじめに
会社に入って、初めて確定拠出年金を知るという方も少なくありません。十分な研修時間が設けられている会社もあれば、自己学習をするようにと資料が渡されるだけの会社もあります。今回は、確定拠出年金デビューの方向けの運用商品選びを解説します。
元本確保型商品はいったん無視する
会社で行う確定拠出年金は、企業型DCと呼ばれ、会社が掛金を拠出します。この掛金は、会社が出してくれるお金という意味では給与と同じですが、税金がかからない、社会保険料が引かれないため、全額が自分の将来の積立に回せるというメリットがあります。
掛金は、加入者それぞれの確定拠出年金口座に拠出されます。この口座は加入者固有の口座ですが、口座を開設する手続きは、会社がすべて行ってくれます。またこの口座は開設する時、維持している間、手数料がかかりますが、それらもすべて会社が負担してくれます。
毎月口座に拠出されたお金を運用するのは加入者です。加入者は、あらかじめ会社が選別した運用商品群の中から一つ、あるいは複数の運用商品を選びます。
運用商品には「元本確保型」と呼ばれるタイプのものと、「元本変動型」と呼ばれるタイプのものがあります。運用商品の数は35本が上限とされていますが、20本前後という会社が多いようです。運用商品はいつでも変更が可能ですが、選ぶ商品によって運用成果が異なるので、加入者は慎重に選ぶ必要があります。
元本確保型商品は、定期預金や保険といった商品で、満期において元本が減らないという特徴があります。定期預金の場合、満期日前に解約すると、約束されていた金利より低い金利が適用されてしまいますが、それでも元本が割れることはありません。一方、保険は中途解約の際、手数料が引かれるため元本が割れることがあります。
初めて確定拠出年金に接する方は、とりあえずなじみのある元本確保型を選んでしまう傾向がありますが、以下2つの理由から元本確保型はお勧めできません。
1つ目の理由は、「増えないから」です。定期預金も保険も一定の金利がつきますが、現在の金利は非常に低いです。特に確定拠出年金は老後資金作りに特化した仕組みで、60歳まで引き出すことができません。長い年月を低金利でお金を眠らせるのではなく、経済成長の恩恵を受けながら資産を増やすのが望ましい姿だからです。
2つ目の理由は、税制メリットのためです。確定拠出年金の口座内で得た利益は、すべて非課税です。このメリットは当然、利益がなければ意味がないものですから、税制メリットを享受するためには、「利益が期待できる」運用商品を選ぶべきなのです。