はじめに
元本確保型を選ぶべきケース
では、元本確保型商品はどういう時に選ぶべきなのでしょうか? これには3つのケースが考えられます。
1つ目は、転職する時です。会社を辞める時は、企業型DCの口座も閉鎖され、進路によって異なる確定拠出年金に移されます。その際、すべての運用商品が現金化といって、金融機関のタイミングで解約されます。この時、市場の影響で資金が減ってしまったりすることを避けるためには、あらかじめ元本確保型商品へ資金を移動させることが有効です。
2つ目のケースは、老齢給付金として引き出しをする時です。これも転職同様、現金化が条件ですので、その際も事前に元本確保型に資金を移動させながら、引き出し準備をしていきます。
最後の3つ目は、まとまった金額を確定拠出年金の口座に移換させる時です。例えば転職により前の会社で運用していた企業型DCの資金を新しい会社の企業型DC口座に移換させるといった時に、いったん元本確保型商品にいれ、タイミングを見ながら運用商品に振り分けることがあります。
いずれにしても、これから確定拠出年金を始めるという方の選択肢ではありませんので、元本確保型はいったん無視して元本変動型を見て行きましょう。
GPIFの運用をお手本にする
元本変動型というのは、投資信託です。投資信託は、株などの投資にありがちな「どの会社の株を買ってよいか分からない」といった不安事を、まるっと専門家にお願いできる優れた仕組みです。加入者は少ない掛金であっても、投資の専門家の力を借りることができます。
企業型DCにおいても投資信託がたくさん用意されていますが、まず4つの投資信託を選ぶことから始めましょう。日本の株式・債券に投資をするもの、外国の株式・債券に投資をするものの4つです。
運用商品を選ぶ際は、それぞれ自分の確定拠出年金のサイトにログインしますが、その中に必ず運用商品一覧といったページがあると思います。恐らく、投資先によって投資信託が並んでいると思いますので、「区分」欄にある「国内株」「国内債券」「外国株」「外国債券」といった名称を頼りに、4つにタイプを分けてみましょう。
例えば、日本の株式に投資をする投資信託が複数ある場合は、「信託報酬」の列を見て、最も数字が小さいものをピックアップします。恐らく「インデックス」、あるいは「パッシブ」といった種類の投資信託になるでしょう。
同様に日本の債券に投資をする投資信託を1本、外国の株式と債券に投資する投資信託をそれぞれ1本ずつ選びます。外国に投資するものが複数ある場合は、新興国ではなく先進国を選びます。「外国」と言う表記と「新興国」という区分になっている場合は、「外国」を選びます。
このように4本の投資信託をセレクトしたら、配分登録のページで購入商品の指定を行います。見ていただくと分かりますが、商品名を選んだら割合を指定するようになっているので、それぞれ25%ずつ、合計100%とします。
この組み合わせは、日本の年金資産を運用する国の機関である、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の基本ポートフォリオと同じです。資産運用における基本中の基本ともいえるポートフォリオで、これらの4つの投資先を「基本の4資産」と呼んだりします。私たちの年金は、この運用の組み合わせで年率の収益率は3%強となっています。
一度組み合わせた投資信託の配分は、時間が経過するとともに崩れてしまうのが普通です。崩れた配分を、元の配分に戻す行為を「リバランス」といいます。具体的には、いま利益が出ていて大きく膨らんでしまった投資信託をその分だけ売却し、いま損失が出ていて小さく縮こまってしまった投資信託をその分だけ購入します。
しかし、この「リバランス」を実際に行うのは難しいとおっしゃる方が非常に多いです。利益が出ている投資信託を売却するのも勇気がいりますし、損失が出ている投資信託を買い付けするのも勇気がいります。
そんな方は「バランス型」を選択します。これはあらかじめ、ファンドマネージャーが株や債券といった複数の投資先を組み合わせ、適時その配分の調整も行ってくれる便利な投資信託です。
バランス型にも種類がありますが、安定型とか株20などといった名称の、主に債券に投資をする投資信託ではなく、さきほどのGPIFの運用のように、株式と債券、日本と外国にほどよく投資をしているバランス型を選びましょう。
このように、確定拠出年金で初めて運用商品選びをするという方は、日本の株と債券、外国の株と債券に投資をする投資信託の中で、信託報酬が最も安い投資信託を4本とするか、同様に日本の株と債券、外国の株と債券にほどよく、かつ自動的に投資を行うバランス型の投資信託1本を選びましょう。