はじめに
株価を引き上げたのは「中期経営計画」
決算発表のタイミングで、3社とも中期経営計画を策定、公表しています。
中期経営計画は、今までも多くの企業が策定していますが、これほど中期経営計画で株価が反応したことはなかったように思います。とくに中期経営計画で意識されているのが、「企業価値の向上」です。分かるようで分からない曖昧な言葉ですが、噛み砕くと“稼ぐ力を上げていく”ということです。稼ぐ力は、営業利益率や、ROEといった数字に反映されますので、各社とも数値目標を掲げております。
遠藤照明は、連結売上高10%、連結営業利益率10%超えを目標としています。
画像:遠藤照明「中期経営計画の見直しに関するお知らせ」より引用
未来工業は、ROE8%以上、連結営業利益率12%以上を目標としています。
画像:未来工業「中期経営計画策定に関するお知らせ」より引用
JVCケンウッドは、ROE10%とPBR1.0倍超の早期実現を目標としています。
画像:JVCケンウッド『新中期経営計画「VISION2025」説明プレゼンテーション資料』より引用
なぜ中計に株価が反応するのか?
東京証券取引所は2023年に入り、頻繁に「企業価値の向上の実現に向けて、経営者の資本コストや株価に対する意識改革が必要」と提言しています。というのも、現在、プライム市場、スタンダード市場の3市場を合わせて約60%の企業が、ROE8%未満、PBR1 倍割れで、資本収益性や成長性といった観点で課題があると考えられています。欧米企業と比べると見劣りするため、海外投資家が日本株を買ってくれないという実情があり、なんとか改善したいと、ここにきてかなり東証が強気の態度を見せています。
3月31日(金)に開示された「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」という資料では、プライム市場、スタンダード市場に上場している全企業に向けて、現状分析し、計画策定・開示をし、取り組みの実行をできる限り速やかに行うよう要請しています。これにより、今までとくに株価を意識することなく、マイペースでぬるま湯に使っていた企業が、なんとなく居心地が悪くなり、次々と重い腰を上げ始めています。
画像:日本取引所グループ「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」より引用
上記3社も、東証からの要請を意識しての中計発表であることは疑いようがなく、それを投資家が評価したという流れです。
重要なのは継続と実現
もちろん中期経営計画を出したから終わり、というわけではありません。短期的に株価は跳ねましたが、絵に書いた餅だと分かると、投資家はすぐにそっぽを向くでしょう。取り組みを継続し、実現できるかどうか、今後の対応を注意深く追っていきたいと思います。
※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。