はじめに

2023年3月3日、「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。
この法律は「空き家対策特別措置法」や「空き家特措法」とも呼ばれ、名前の通り、空き家対策に関する法律として、2015年に施行されました。(以下、この記事では特措法と呼びます)。

日本全国、空き家は年々増え続けており、まちの美観や衛生に悪影響を及ぼしたり、防災、防犯上のリスクも高まったりと、特に空き家の放置は、所有者だけでなく、近隣住民にとっても”百害あって一利なし”の状態です。

こうした背景から生まれた特措法ですが、約8年経ち、特に空き家所有者にとっては軽視できない重要な法改正となりました。今回は、この改正によってどんな影響があるのか、もし自分が空き家所有者だった場合、どんな対策が取れるのかをご紹介します。

参考:国土交通省「「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」を 閣議決定」


特措法とは?——「空き家の放置」で、税金6倍!?

空き家所有者にとって、特措法による最も大きな影響は「固定資産税が最大6倍増になる 」ことです。

厳密には、「住宅のある土地は、土地の固定資産税を最大6分の1にする」という軽減の特例(固定資産税・都市計画税の住宅用地に係る課税標準の特例)が適用されているのですが、特措法に基づく空き家と判断されると、この特例が受けられなくなるため、相対的に6倍になってしまうのです(但し、その土地面積や立地などによって軽減内容が異なるため、実質3~4倍に留まる場合もあります)。

ただし、住宅に誰も住まなくなった日から、直ちに固定資産税が増えるわけではありません。
特措法が適用されるプロセスは、例えば空き家の窓ガラスが割れるほど放置されていたり、庭の草木が成長して倒木や害虫が発生するような状態になると、市町村役場が「これは危険な空き家だ」と判断し、所有者に対してその改善や管理のための助言や指導、勧告がなされます。

もちろん、その通知を受けて適切な改善をし、それを認めて貰えれば、その勧告などは撤回されます。しかし、そのまま改善をせずに放置していた場合、その翌年から「特定空き家」と認定され、先に挙げた固定資産税が増えることとなります。

なお、空き家の状態が特に劣悪な場合や、周辺への影響が大きいと判断された場合には、行政代執行といって、市町村役場が強制的に空き家を解体し、その解体費用を請求される場合もあります。

今回の法改正で変わったことは?——特措法の対象になる空き家が急増する可能性も

それでは、今回の法改正によって、どんな変化があるのでしょうか。

それは、管理状態が劣悪と判断される「特定空き家」に加え、「管理不全空き家」という概念が新設されました。
管理不全空き家についての詳しい判断基準は公表されていませんが、定義として「放置すれば特定空き家になるおそれがあるような、窓が割れていたり雑草が生い茂ったりしている空き家」とされています。

管理不全空き家と判断された場合も、特定空き家同様に、その後の管理を適切に対処しないと、固定資産税が最大6倍になってしまうのです。

現在の試算では、全国の50万戸近い空き家が、この管理不全空き家に該当すると予想されており、自分の家族や親族が所有している不動産まで広げて考えると、決して対岸の火事ではないといえるでしょう。

参考:NHK「空き家対策「管理不全空き家」とは 指定で固定資産税の減額解除も」

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