はじめに

「アマゾン・キー」が発展すると…?

さて、このサービスが発展すると、さらにおもしろい可能性が広がります。まず、以前に私がアメリカで暮らしていたときの話を紹介しましょう。

当時、私は「家具付きの一軒家」を借家として使っていました。これはアメリカではよくある賃貸のかたちで、単身赴任のように身ひとつで引っ越してくる人にとってはかなり便利な方式です。

そしてその家の鍵を、私と家主以外にも、実は2人の方が持っていました。1人は家主が雇った清掃員、もう1人は同じく庭師です。

入居時に家主から「毎週水曜日の午後、清掃員が勝手に入ってきて家中のカーペットを清掃するので、その時は貴重品を出しっぱなしにしないように」と注意を受けました。また「庭師は週に2回ぐらい午前中に庭の手入れをするために入ってくるので、びっくりしないように」とも。

これには戸惑いましたが、ある意味、合理的な生活でした。というのも、私の外出中に部屋がきれいに掃除され、自分で庭仕事をしなくても庭木が整えられているわけです。

有休の日など、たまにに庭師と顔を合わせた際には「ハーイ」と挨拶をしたり、清掃員が来ると掃除の音がうるさいので「じゃあ、1時間ぐらいスタバに行ってくるから、その間によろしくね」と頼んだりしたものです。

新しい需要を生む可能性

たまに芸能人の方などにいらっしゃいますが、ホテル住まいの方はこのような生活に慣れていることでしょう。自宅代わりとして使うホテルの部屋には、毎日、ハウスキーピングの人が入ってきます。

自分ひとりでいたい時や部屋に入ってほしくない外出時には「Don’t Disturb(邪魔しないでください)」のサインをドアにかけておけば、誰も入ってくることはありません。携帯がなかった時代では、ホテルの交換手にお願いしておけば外部からの電話もシャットアウトできたそうです。

スマートキーと室内監視カメラがどの家庭にも常備される時代になれば、このように私たちの日常生活は快適なホテル暮らしと同じになるかもしれません。

壊れた家電製品の修理の立ち会いでせっかくの休日が無駄になってしまうということもなく、出かけている間に家電の修理も完了するでしょう。

ちょっと贅沢という感じで、月に1度ぐらい清掃サービスを頼む。それも自分が自宅にいない間にきれいにしてくれるということであれば「やってみたい」と思う人は増えるのではないでしょうか。

同サービスの日本展開は現在未定ですが、今後アマゾンが本格的に導入することで、スマートキーが世の中の標準になると、鍵はこれまでのように外部から誰も入れないようにするためのものではなく、住人の留守中でも選んだ人を外部から招き入れるための道具に変わるはず。

そしてそうなれば宅配だけではなく、さまざまな家庭サービスに“革命”が起きる可能性もあるのです。

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