はじめに
見直しの際は終身保険がおすすめ
受け取りやすさの観点から、万一の時にすぐに必要になる葬儀費用などを生命保険で準備しておくことは、残されたご家族に迷惑をかけない効果的な方法であると言えるでしょう。コロナの影響を受け、葬儀の平均価格はここ数年で下がってはいるものの、ある程度まとまった額が必要となることは否めません。
このような目的で生命保険の加入を検討するならば、保険期間の定めがなく一生涯保障が続く終身保険を選択するといいでしょう。なお相続人のうちの一人が受け取った保険金から葬儀費用を支払った場合、遺産分割時に清算することが可能ですので、ご安心ください。
もちろん実際に保険を見直す際には、葬儀費用だけでなく、残されたご家族の生活費や住居費などを、自身の資産と生活に照らし合わせて保障を考える必要があります。
指定した人に資産を残すことができる
もう1つ、意外と知られていないこととして、生命保険の保険金には相続税の非課税枠があることをご存知でしょうか?
契約者(保険料負担者)と被保険者が同じで保険金受取人が相続人の場合は、500万円 × 法定相続人の数までの金額について相続税が非課税となります。例えば、相続人が配偶者と子ども2人の場合は、500万円 × 3人 = 1,500万円までが非課税です。預貯金で残すよりも非課税限度額までは生命保険に加入しておくことで、もしもの時に残されたご家族が支払う、相続税の負担を軽減することが可能です。
保険金は相続財産ではなく、受取人固有の財産となりますので、遺産分割の対象にはなりません。相続放棄した人でも受け取りが可能ですし、遺留分の対象にもなりません。そのため、生命保険を利用することで、指定した受取人に確実に資産を残すことができると言えるでしょう。ただし、相続人の間に著しい不公平が生じる場合、相続財産に含めて計算する場合もあります。
また、少しマニアックな話になりますが、元々相続人ではない人が、亡くなった方(被相続人という)の遺言に則り、法定相続人以外にその遺産の一部、または全部をゆずる「遺贈」により生命保険金を受け取った場合、受贈者(遺贈により財産を受ける人)として相続税の課税・申告が必要になります。受贈者になってしまうと、生前に贈与を受けた分についても相続税の生前贈与加算の対象となってしまいます。さらには、相続税の申告書は、相続人と受贈者が連盟で亡くなった方の生前の住所地の税務署に提出することから、贈与の事実が伝わってしまうという注意点があります。
生命保険の活用については、可能であればファイナンシャルプランナーや税理士などの専門家と相談しながら進めていくと、相続を見据えた場合も安心ですね。
子どもが独立し、さらに自身や配偶者の年金の受け取りが開始されると、高額な死亡保障は必要がなくなります。しかし、生命保険には単に保障額だけでは測れない側面があることを知っていれば、いざという時のために準備をしておくことが出来るので、ご家族も安心されることでしょう。
「子どもが独立して間もないのに、葬儀の話なんて早すぎる!」と思う方も多いかと思いますが、新しく保険に加入するには、その時の健康状態も関わってきます。入りたい時に入れないという恐れもありますので、将来のための準備は早いに越したことはありません。
保険は死亡保障と思っていた方も、この機会に視野を広げて保険を活用されてみてはいかがでしょうか。特に相続を見据えた保険活用は、専門家と相談しながら進めればしっかりとした対策が可能になります。生前に親子でしっかり話し合う機会が持てるとよさそうです。
【監修】伊達有希子/ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)