はじめに
妊活や出産での医療費控除
医療費控除という制度をよく聞くけれども、制度を正しく把握されている方は意外と少ないようです。ここで簡単におさらいしておきます。
1年を通して医療費をたくさん払ったという場合は、10万円を超えた部分が「所得控除」として引いてもらえるという制度です。ここでいう医療費は、家族全員分を合計できます。共働きでも合計してOKです。
家で親の介護をしているという場合なども、親の医療費を面倒見ているというのであれば、それも足し込んで構いません。また、薬局やドラッグストアで買った「医薬品」も対象になりますので、レシートを捨てないで置いておきましょう。
共働きの場合は、誰で医療費控除を受けるのがお得か、という判断が重要です。より所得が高い人で控除を受けると、税率が高く節税効果が大きいということになります。
例えば、給与の年収が460万円の人と490万円の人を基礎控除と社会保険料控除のみと仮定して比べると、適用される所得税率が460万円の人は10%、490万円の人は20%です。住民税の10%を合わせると、20%と30%の税率で控除が受けられるラインにいることになります。家族全員分を合計して、医療費を年間25万円払った場合、10万円を超えた部分は15万円なので、受けられる所得控除が15万円、節税効果は15万円×税率分となります。
つまり、年収460万円の人は15万円 × 20% = 3万円、年収490万円の人は15万円 ×30% = 4万5,000円の節税効果となるので、490万円の人で控除を受けた方が1万5,000円分の税額が安くなるということです。
「妻が不妊治療を受けたり、出産費用を支出したりするので、妻の方で医療費控除を受けなければならないですか?」と質問されることがありますが、産休育休の影響で年収が下がっている妻の税額計算に医療費控除を使ってしまうのは、さらに税率が下がっている可能性もあるので、節税効果は小さくなることが予想されます。少ししか税金が還付されないのに、大量の領収証の束を一生懸命集計して労力を割くのは、なんて……嘆かわしい!
その年の年収が高く、税額が高くなりそうな人で控除を受けるようにしてくださいね。
「今の私には関係ない」と思うことでも、ライフスタイルが変わったり、年収が変化したりすると、必要になる知識もあります。節税のアンテナをしっかり立てて正しく節税することで、効果が最大限に発揮できて、その分お金も貯まります。なんて……喜ばしい!
正しいルールを理解して、誰でどんな控除を受けるのがベストなのか、これを機に再確認しましょう。