はじめに

お笑い芸人・よゐこの有野晋哉さんが、毎月さまざまな専門家をゲストに迎えて、お金の知識を身に付けていく「お金の知りたいを解決!お金の学園〜学級委員・よゐこ有野晋哉〜」。2023年8月は個人投資家でCFPの藤川里絵先生に、株式投資について伺いました。

今回は、「投資スタイル」について。それぞれどんな違いがあるか、ご存知ですか?


有野晋哉(以下、有野):長いこと「ゲームセンターCX」をやってきたけど、他の人のゲーム動画って、過酷すぎてマネ出来ひんなぁ。そもそも最新ゲームって、画面酔いするし(笑)

藤川里絵(以下、藤川):有野さん、早速ゲームのお話しですか?

有野:この前、ピン芸人の狩野英孝くんがゲーム会社のYouTubeチャンネルでやってる企画と、僕がやってきた「ゲームセンターCX」がコラボをしたんですけど、ゲームとしてよく出来てる部分があったから教えたくって、ポーズボタン押したら「課長、今押さなくても!」って凄い怒られて。知って欲しかってんけど、「後でいいです!」って言われて。同じゲームをやっていても、ゲームに対するスタンスが全然違っていて面白かったな、って話です。

藤川:本当にいろんなスタンスの芸人さんがいらっしゃいますよね~。有野さんの「ゲームセンターCX」も、それだけ長年に渡って大勢の人に支持されているというのは、そのスタンスが受け入れられているということですよ。

有野:ありがたい話ですけど、確かに無理して自分とは違うスタンスでやろうとすると、ここまで長く続かなかったかもしれませんね。

藤川:ゲームやお笑いだけではなく、株式投資にもさまざまなスタンスがあるんですよ! 今回は、株式投資と向き合うスタンスについてお話ししましょう。

有野:キレイな流れ(笑) 先生、お願いします!

デイトレには体力と精神力が必要?

藤川:株式投資には、短期的に売買を繰り返して利益を積み上げたり、ずっと持ち続けることで株価の上昇や配当を狙ったりするなど、さまざまなやり方、スタンスがあります。その人の投資の目的や生活のスタイル、投資に対する考え方、性格などによって、その人に適したスタンスが変わってくるんです。

有野:へぇ〜、性格でもスタンスは変わるんですか?

藤川:性格って、割と投資のスタンスに大きく影響するんですよ。たとえば、気が短い人が何年も1つの銘柄を持ち続けることで儲けようと思っても、途中で我慢できずに売ってしまいそうですよね。反対に、優柔不断でなかなか即断即決できない人だと、1日で何度も売買する「デイトレード(デイトレ)」をやろうとしても、なかなか売買注文ができずにチャンスを逃してしまうかもしれません。

有野:なるほど、確かにそうかぁ。デイトレって、株価がわ~って動いているうちに買ったり売ったりするやつですよね? 僕、そっちは苦手やと思います。まだ上がるんちゃうか、って待ってしまう。ゲームでも、まだアイテムあるん違うか、ってやってしまうスタンスです。

藤川:そうです。テレビのニュースなどで、時々「何億円稼いだトレーダー」のような感じで取り上げられているのを目にしますが、その手のトレーダーは、デイトレのように短期間で売買して利益を積み重ねるスタンスの方が多いと思います。

有野:どっちかっていうと、株式投資のイメージはそういう感じですね。ドバイとかに住んで、ズラ~っと並んでいるモニターを眺めながら、「いまが買い!」って。あのたくさんの画面見るたんびに、タイトーの名作シューティング『ダライアス』みたいでいいなぁ、って考えてしまう。

藤川:有野さんは、すぐゲームで連想しますね(笑) ドバイかどうかはともかく、デイトレは買った銘柄を翌日に持ち越さず、当日中に手じまいしてしまうやり方ですね。その日の値動きの中で、「安く買って高く売る」を繰り返して、少しずつ利益を積み重ねていく手法です。基本的には、相場が閉まった時点で持ち株がゼロになるので、長期保有と比べると投資リスクが限定的と考える人もいます。

有野:ギャンブルみたいで危ないイメージがあったけど、最終的にその日に全部売って終わってたんですね! 長期も積立も分散もしないんや、全くスタンスが違う。その分、決断力と経験値みたいな知識が入りますねぇ。なんで持ち株をゼロにしてしまうんですか?

藤川:その日の相場が終われば株をすべて手放すと、たとえば夜中にリーマン・ショックのような、ものすごくネガティブなことが起きて、翌日の日本の相場が暴落した場合でも、「含み損」を抱えるリスクはないんです。ただし、細かい売買で損が積み重なって、結果的に大きく資金を失ってしまうリスクは当然あります。

有野:なるほど! 長期で持ってると、こっちは相場が終わって寝てても、世界は起きてるから、そっちでなんかあったら、もう大変や。相場が暴落した時には損しちゃいますもんね。

藤川:ただし、デイトレのような短期トレードは、ずっと株価の動きを注視していないとできないので、基本的には専業でやることになるケースがほとんどです。なかには、トイレさえ我慢してモニターに張り付いている人もいるくらい。

有野:えぇ~、トイレも行けへんの!? 滅茶苦茶シビアなタイミングですやん。ドバイに住んでて悠々自適やと思ってたけど、そんな生活、もう50代の僕には無理です(笑)

藤川:これは極端な例ですが、「トイレに行っている間に相場が急に下げ始めて損をしてしまったら……」と考えてしまうのもわからなくない話です、それだけ集中してトレードに臨む必要があるというわけですね。私は基本的にデイトレはしませんが、かなり体力も必要だと思います。

有野:え、体力がいるんですか!? 机の前に座ってマウスをカチカチやってるだけで「何万円儲けた~」ってイメージだったんで、体力はいらんもんと思ってました。

藤川:ずっとモニターに集中して、株価のトレンドの変化などをチェックし続ける必要がありますし、即断即決できる力、判断力や瞬発力も求められるので、かなり疲れると思いますよ。デイトレで何十億円も稼いだトレーダーは、初めの頃はトレード前に緊張で毎日吐いていたなんて話も聞きました。

有野:若手芸人のコンクール前日みたいですね……そんなに緊張するものなんですか?

藤川:トレードの金額が大きくなってくると、少しの判断ミスで何百万円も損する可能性があるわけです。他で働いている方なら別ですが、専業でやっていると、投資で勝たないと収入がないわけですから、それこそトレード1つ1つが生活や人生に影響します。そういうプレッシャーもあるので、よほど精神的にも強くないと、長く続けるのは難しいでしょう。

有野:身と心を削ってやってるんやなぁ。時間を忘れるほどゲームに集中することはあるけど、吐いたことなんて一度もないなぁ(笑) ドバイで楽して生活してる人って思ってたけど、デイトレに対するイメージが変わりました、デイトレーダーに謝らなあかんわ。それにしても、デイトレで何億円も儲けてるって話を聞くと、「俺も俺も!」ってなっちゃう人が多そうですね。

藤川:話だけを聞くと、なんだか簡単そうな気がしちゃうんでしょうね。1日3万円の利益を目標に、「3万稼いだらその日は終わり」って決めたら、自分でもできるんじゃないかって。でも、3万円を短時間で稼ごうとすれば、短時間で3万円負けてしまう可能性もあるということ。1日3万円負けるのって、結構厳しくないですか?

有野:絶対嫌ですよ、負けた日には「普通に働いといたらよかった~」ってなりそう。それが続くって考えるだけで、「ヒエ〜〜!」ですね。

藤川:仮に、3日連続で負けると9万円のマイナス。それでも心が折れず、また次の日に同じことをやれる精神力が必要なんですよ。そのような経験をすると、「自分に株は向いてないわ」って考えて止めてしまうか、短期から中長期投資にシフトすることになると思います。

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