はじめに
オリンパスの株価は不正発覚後10倍以上に値上がり
かつて、富士通や日立、NECなどと並んで電機メーカーとして名を馳せた東芝。2015年に大規模な不正会計が発覚し、株価はおよそ1年で3分の1程度に下落しました。この東芝のケースでは、株価低迷が長期にわたり、確かに「事件は売り」の格言通りと言っていいでしょう。その後、同社は米国の原子力子会社の経営破綻によって1兆円超の巨額赤字を計上するなど業績が低迷。2017年には東証1部から2部に鞍替え降格されました。
2011年に大規模な不正会計が発覚したオリンパスのケースではどうでしょうか。同社は10年以上に渡って損失を隠し続け、2011年には粉飾が露呈。株価は暴落しました。一時は上場廃止の可能性も指摘されましたが、経営陣の一新など思い切った改革が功を奏し、株価は徐々に上昇。2012年以降はアベノミクス相場の効果も加わり、株価は約10年間で10倍以上に値上がりしました。粉飾決算が発覚して株価が急落した直後の底値を買えていて、さらにその後10年間保有できていれば、資金は30倍ほどに膨らんだことになります。しかし、上場廃止の噂が出ても売らずに10年間も持ち続けるのは、あまり現実的ではないでしょう。
2000年以降、エアバッグの不具合が発覚し、大規模リコールを余儀なくされた自動車メーカーのタカタや、債務隠蔽の粉飾決算が発覚した化学メーカーのカネカ、燃費不正が発覚したスズキや三菱自動車など、多くの上場企業の不正や不祥事が発覚しています。ここで挙げた例では、その後倒産したタカタを除けば、事件発覚から1か月~2年ほど株価が低迷した後、株価は反発しています。
結局は業績がモノを言う
ここで1件、不祥事発覚のダメージが長期にわたって続いているケースを紹介しましょう。2018年にシェアハウス向けの不正融資が発覚したスルガ銀行です。同行は、不動産投資のためのローン審査において書類の改ざんを繰り返すなど、不正を連発。この不正によって被害を受けた債務者が「スルガ銀行不正融資被害者同盟」を結成するなど、いまだに事件は解決していません。
スルガ銀行は財務基盤が強固で収益力も高く、「優良地銀」の1つに数えられていました。株価は不正発覚以前、2500円前後で推移していましたが、不正発覚後に暴落。2020年3月には、一時は300円を割り込む局面も見られました。銀行は信用力で経営が成り立っている側面があり、同行の業績は好転の兆しが見えるどころか、さらに落ち込んでいます。一度失った信用を取り戻すには、数年程度の時間では難しいということなのでしょう。
結局、不祥事が発覚した企業の株価がどうなるかについては、「その後の業績がどうなるか」という点に尽きます。事件後、一時的に業績が落ち込んだとしても、その後立て直すことができれば、株価は反発する可能性が高いでしょう。これは「事故」も「事件」でも同様です。ただし、株価反発の度合いについては、全体相場の動向もカギになりそうです。
事故や事件が発覚した後、1年、あるいは5年、10年先の業績をある程度見通すことができるなら、オリンパスのケースのように「事件でも買い」と判断することができます。もっとも、10年先の業績が見通せるのであれば、あえて不祥事が発覚した企業を狙う必要はないかもしれません。