はじめに

老後の生活費の基盤になる年金。その年金が、普段はどのように管理されているのか、ご存じですか? 時折、メディアが年金の運用で「〇〇円の利益(損失)」などと報じることがあるため、何らかの形で運用されていることは知っているという方も少なくないはず。では、具体的にどのように運用されているのでしょうか。今回は、「年金運用」を紹介します。


GPIFの運用手法

2023年8月4日、年金の運用について「4-6月期の運用収益は18兆9834億円」との発表がありました。発表元は「GPIF(Government Pension Investment Fund)」。日本語にすると、「年金積立金管理運用独立行政法人」です。このやたらと長い漢字だらけの組織は、今から遡ること約60年前の1961年に設立され、1986年から年金資金の運用を担当していました。2006年以降は現在の「GPIF」に名を変え、年金積立金の管理・運用を行っています。その額、実に約220兆円(2023年6月末現在)。公的な資産運用団体としては、世界最大の規模です。

といっても、GPIFがすべての年金を運用しているわけではありません。GPIF自体はごく一部の資金を運用しているに過ぎず、実際に運用を任されているのは、信託銀行や資産運用会社です。三井住友トラストやアセットマネジメントOne(旧みずほ信託)といった国内の会社だけでなく、ブラックロックのような外資の資産運用会社も委託され、運用を担当。委託された各社がそれぞれ自由に運用しているわけではなく、運用方針やベンチマーク(運用の指標となる株価指数)が定められています。年金の給付は、その年の年金保険料の収入と国庫(国の資金)から行われており、GPIFが運用するのは、給付後に残った余剰分の資金です。

さて、能書きはこのくらいにして、GPIFで実際にどのような運用が行われているのか紹介しましょう。その運用スタンスは、至ってシンプルです。運用資産を「国内株式」「国内債券」「外国株式」「外国債券」の4つに分け、それぞれ資産の約25%ずつ投じるというもの。仮に、4つの投資対象のうち、相場が上昇して25%を上回った時には、リバランス(再配分)を実施して、元の25%に近付くように調整します。

仮に、日本の株式相場が大きく上昇することで保有する株式の価格が上がり、資産全体に占める日本株の比率が30%を超えたとします。その場合、日本株を売り、その他の資産を買い増すことで、バランスを調整するわけです。こうして、長期かつ安定的な資産運用の基本中の基本と言われる「長期国際分散投資」を実現しているのです。

厚生労働大臣の名のもと、4年ごとに中期目標が策定されますが、いまのところ「資産の25%ずつ、前述の4つの対象に投資する」方針が変更される動きはありません。ただし、経済や社会情勢、運用環境などに合わせて年金給付の水準を決める「マクロ経済スライド」という方式を採用しているため、今後の動向次第では、運用スタイルが変更される可能性はあります。実際、過去には相場が不安定なため、積立金が大きく目減りするリスクを減らすため、「国内債券」の割合を60%以上まで高めた局面がありました。

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