はじめに
ケース(2)初めて住宅ローン控除を利用する人
住宅ローン控除は正式名を「住宅借入金等特別控除」と言います。個人が住宅ローンを利用し、一定の要件を満たして居住用の家を購入、増改築などをした場合に、年末の住宅ローン残高を基に計算した金額が、居住した年以後の各年分の所得税額から控除される制度です。
ふるさと納税との併用は可能ですが、控除の対象が重複しているため、併用することによる控除上限額の変化に注意が必要です。ふるさと納税による寄付金控除が優先して適応されるため、本来控除されたはずの住宅ローン控除が引ききれず、手出しが増えてしまった、という事態は避けたいものです。
収入状況により影響を受けないケースもありますが、ふるさと納税サイトの詳細シミュレーションで住宅ローン控除を入れた上で試算をし、適応後の控除上限額を確認してから取り組みましょう。
住宅ローン控除の適用を受ける1年目は確定申告を行うことが必須条件となっているため、ふるさと納税の控除申請にワンストップ特例制度を利用することはできません。誤ってワンストップ特例制度を利用していた場合は、確定申告を行う際にふるさと納税の申告を改めて行います。
なお2年目以降は、年末調整で住宅ローン控除の手続きを行う方は、他に申告が必要なものがなければ確定申告は不要となりますので、ワンストップ特例制度を利用することが出来るようになります。
ケース(3)退職・転職・産休などで収入状況が変わる人
転職や退職をした方、休職をしていた期間がある方は、所得税率などが変化し、控除上限額が変わる可能性があります。今年の収入目安金額でシミュレーションを行い、控除上限額を確認しましょう。なお退職金を受け取った場合、退職金にかかる住民税はふるさと納税の控除対象外ですので、シミュレーションをする際には含めません。
産休・育休を取得中の方も、ふるさと納税を行うことができます。ただし、年収が下がっている場合は控除される金額も下がりますので、シミュレーションで確認をしましょう。
出産に関する手当金として出産手当金や、育児休業給付金などがありますが、これらの手当金は非課税所得であるため、所得税や住民税といった税金はかかりません。そのため、シミュレーションをする際には手当金を年収に含めないようにしてください。
おおまかな目安として、年収200万円を超えるくらいから、ふるさと納税のメリットがあると言われています。しかし、出産に伴い医療費控除などを利用する場合は、さらに控除上限額が変わってくるため、詳細なシミュレーションが必要です。
ケース(4)控除を受ける人と決済名義の相違にも注意
ふるさと納税の控除を受ける本人以外の家族が手続きを行うこと自体は、本人の了承を得た上であれば問題ありません。ただし、注意が必要な点もあります。
まずはふるさと納税サイトに登録をする際に、控除を受ける本人の名前と住民票住所で登録をすること。それから支払う際の決済名義です。
ふるさと納税は原則、控除を受ける人と決済をする人は同一でなければならないと定められています。クレジットカードやPayPayなどのQRコード決済サービスを利用することもできますが、決済サービスの名義人とアカウントの名義人ともに控除を受ける本人であることが必要です。控除を受ける人と決済名義が同一でない場合、無効となり控除を受けられない可能性もありますので、支払い時には注意をしましょう。
ただし例外もあります。クレジットカードの引き落とし口座が控除を受ける本人名義である場合です。
例えば、ふるさと納税の控除を受けるのは夫であるが、妻名義のクレジットカードで決済をし、カード代金の引き落とし口座の名義が夫である場合、支払者は本人と同一と見なされるため問題ありません。
なお誤って控除を受ける本人以外の名義で決済をしてしまった場合、サイト上ではキャンセルができない可能性が高いため、寄付先の自治体に速やかに連絡をして相談しましょう。
紹介した4つのケースに当てはまらなかったとしても、今年利用できるふるさと納税の金額は、今年の最終的な年収と、他に利用する制度などにより変わる可能性があります。少しでもお得に利用できるならば……と、9月末までにふるさと納税を済ませたくなるかもしれませんが、控除上限額のギリギリまで利用を進めることはお勧めしません。
今年の控除上限金額をシミュレーションで確認した上で利用を進めていき、年末に収入などの状況がおおよそ確定した段階で最大利用する金額を決めることで、「やるべきではなかった」と後悔しないようにしましょう。
【監修】伊達有希子/ファイナンシャルプランナー(CFP、1級FP技能士)