はじめに
人生100年時代、70歳でリタイアしても、老後は30年。認知症などのリスクに加え、病気やケガで介護状態になるリスクもあります。人口の10人に1人が80歳以上の高齢化社会を経済的に乗り切るために民間の介護保険は必要か。データをもとに検証します。
高齢化の状況
日本の総人口は2022年10月1日現在のデータで、1億2,495万人です。65歳以上人口は3,624万人で総人口に占める割合は29.0%に上ります。今後総人口は減少傾向にありますが、65歳以上人口は増加傾向が続きます。
2070年には65歳以上人口は、総人口の38.7%となり2.6人に1人が65歳以上となります。3人集まれば、ひとりは高齢者という時代です。47年後のことですから、遠い将来で他人事のように思うかもしれません。ですが、現在18歳のひとが、65歳になる時の比率ですから、老後のことを考える意味で重要なデータといえます。
健康寿命と平均寿命の差
一生健康でいることを誰しも望んでいますが、健康な期間がいつまでも続くとは限りません。健康上の問題がなく、日常生活に制限がない期間といわれる「健康寿命」は「平均寿命」より10年ほど短いというデータが、内閣府「令和5年版高齢社会白書」に掲載されています。
男性は約9年間、女性は約12年間、病気やケガなどで日常生活になんらかの支障がある期間があるということです。もちろん個人差がありますが、この期間に介護が必要になってくる可能性が高いといえるでしょう。
厚生労働省の介護保険事業状況報告月報によると、要介護認定者数は、2000年4月約189.1万人から21年後の2021年4月には2.6倍の約492.5万人に増えています。買い物や食事など、部分的に介護が必要な要介護2以上の認定者が約7割を占めており、介護は身近なリスクになっています。
では、要介護の期間はどの位かかるのでしょうか。
生命保険文化センターの調査によると介護を始めてからの経過期間の平均は5年1ヵ月。数年前のデータからみると、平均期間は増加傾向にあります。10年以上の割合も17%におよび、介護の実情は厳しいことがうかがえます。
公的介護保険の負担額は?
万一介護状態になってしまった場合、介護費用を経済的に助けてくれる制度が、公的介護保険制度です。40歳以上になると介護保険料を支払います。要介護と認定された場合、要介護度により、決められた支給上限額までの介護サービスが受けられ、サービスの1割が自己負担となります(世帯年収により自己負担割合が2~3割の場合もあります)。
例えば、要介護5の場合、支給限度額は年額約434万円、1割負担は43.4万円です。月にすると約3.6万円ですから、月4万円の準備があれば、上限まで介護サービスを受けられる計算になります。
ただし、公的介護保険には、給付対象外となる費用があります。例えば、施設に入居して介護サービスを受ける場合、介護サービスは対象ですが、施設の居住費、食費、日常生活費などは、対象外になり、全額自己負担となります。
在宅介護と施設介護でも、必要になる費用がかなり違ってきます。介護度がすすみ在宅介護が難しくなった場合の施設介護を想定すると、民間の介護保険の準備も必要となってきます。