はじめに

日本には本当の意味での労働組合がない

「同一労働同一賃金」は、日本ではピンとこないかも知れません。

たとえば欧米においては、コンビニエンスストアの店長ならば、仕事は同じですので、賃金も同じなのです。つまり、セブンイレブンの店長、ファミリーマートの店長、ローソンの店長は、ほとんど同じ賃金なのです。欧米においては産業別労働組合なので、業界団体と産業別労働組合との交渉で決まっています。ですので、一社だけ店長の賃金が大きく違うということはないのです。

一方、日本は企業別労働組合が中心です。ですので、賃金は会社が決めることになります。もちろん、企業としては労働賃金が安いと競争力がつくので、できるだけ賃金を低く抑えたいです。当然そう考える会社が多いです。日本が差別的な賃金制度になっているのは、こういった影響もあるのでしょう。

「人事」「賃金」を決めるのが会社になっているのですからこのままでは、日本において、同一賃金同一労働になることは難しいところがあります。労働問題に詳しい昭和女子大学の木下武男名誉教授は、「日本には本当の意味で労働組合はない」と言っています。

さまざまな差別が重層的にある

他にも身分制度はあります。「親会社」と「子会社」です。子会社で働いている親会社の人と子会社の社員とは給与が違います。もちろん同じ仕事をしていても違うのです。親会社から来た人だから仕方がないというのは、親会社・子会社に身分制度があるからでしょう。

もっといえば、日系企業で海外に進出している場合は、「現地採用」「本社採用」という身分制度も存在します。これらの差別が重層的にあるのが日本企業なのです。

定年制度は、年齢差別になる

「定年制度」という年齢の差別もあります。60歳になると「定年制度」が理由で解雇されるのです。能力などは、一切考慮されません。定年という理由で解雇になり、たとえ再雇用になっても非正規社員としての雇用になることが多いでしょう。

雇用においては、年齢・性別によって差別をしてはいけないという建前なのですが、実際には年齢や性別による差別は歴然とあります。

アメリカやEU諸国では、年齢差別の禁止が法制化されています。ですので、基本的に年齢を理由に解雇することはできません。とくにアメリカでは定年制は禁止されていて、従業員個人の意思でリタイアの年齢を決められます。

日本の雇用制度は、メンバーシップ型の雇用という日本独特のものがあります。メンバーシップ型の特徴としては、職務を限定しない雇用形態で企業が採用して、人事権も賃金を決めるのも企業なのです。

「ジェンダーギャップ」「同一労働・同一賃金」など是正の声は上がっていますが、なかなか進んでいないのが実情です。だからこそ、差別的な身分制度があることをしっかりと認識しながら、議論していく必要があると思います。

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