はじめに
完全子会社化によって上場廃止になるケースが増加
株式の公開を止め、上場廃止となる理由はいくつかあります。まずは、経営不振などによる破綻。破綻すると、その会社が発行していた株券は基本的に価値がなくなるため、株式市場でも株価は最低価格の「1円」まっしぐらです。「基本的に」とした理由は、上場廃止後も一定の価値を保ち、再建した後の再上場によって、その価値が跳ね上がる可能性が「ゼロではない」ため。ただ、やはり破綻してしまうと株券は紙切れ(いまは株券が電子化されているため厳密には「紙切れ」ではありません)になってしまうと考えるべきでしょう。
では、ほかにどんな理由で上場廃止となる企業が多いのでしょうか。実は、上場廃止のほとんどは「完全子会社化」や「株式譲渡」、「株式併合」によるもの。東芝の上場廃止も、「完全子会社化」です。「完全子会社化」、「株式譲渡」、「株式併合」といっても、あまりピンと来ないかもしれません。「完全子会社化」は、文字通り親会社が上場子会社の株式の100%を保有すること。東証は新規に上場する、あるいは上場を維持するための基準「上場基準※」を定めていますが、1つの会社が発行した株式の全てを保有すると、その上場基準に抵触します。そのため、上場廃止となるわけです。
たとえば、東証プライム市場(旧東証一部)の上場基準は、「株主数が800人以上」、「1日の市場での売買代金の平均が0.2億円以上」、「流通株式数(上場株式数から主要株主や会社役員、金融機関が保有する株式などを差し引いたもの)が100億円以上」など。東芝のケースでは、おもにこの「流通株式」の基準に抵触することになります。その他、「株式譲渡」や「株式併合」についても、それらを行なった結果、上場を維持するための基準を満たせなくなり、必然的に上場廃止となるわけです。
画像:日本取引所グループ「各新市場区分の上場基準」
昨今、東証の市場改革などによって、親会社と子会社が同時に上場する「親子上場」が減少しています。この過程で、子会社が上場廃止となるケースが続出しているのです。