はじめに
上場中に市場で売却するのが無難
気になるのは、上場廃止後に会社や株券がどうなるのかということ。これについては、上場廃止となった理由によって内容が変わります。理由が「破綻」だと、前述したように、基本的に株券の価値はなくなるため、上場廃止になる前に市場で売却することになります。そのため、破綻が発覚した時点で売りが押し寄せ、株価が1円に近付くわけです。
一方、「完全子会社化」など会社が破綻したわけではないのに上場廃止となるケースでは、まだ上場している段階で、親会社などがその株をTOB(株式の公開買い付け)によって買い集めようとします。TOBされる際は、その株をいくらで買い取るかという「買い付け価格」が設定(多くの場合は、TOB発表前の株価に対して1~2割、上乗せされた価格になります)されるので、株主はそのTOB価格で売却に応じるか、もしくは上場廃止になる前に、市場で売却することになるでしょう。なお、TOBに応じず持ち続けようとした場合、TOB実施側によって強制的にその株式を買い取られる可能性があります。
また、上場廃止となった株式は、売りたくても、もう上場していないわけですから、市場で売却することができません。その株式を管理している信託銀行などの「株主名簿管理人」を通して売却することになります。しかし、上場中であれば数クリックで売却できるのに対し、上場廃止後は株主名簿管理人との間で手続きが必要になったり、確定申告時に損益通算(その年の利益と損失を通算して申告すること)ができなくなったりするなど、面倒なことになります。よほど深い事情がない限り、上場廃止が決定した時は、上場している間に売却したほうが無難でしょう。