はじめに

政策保有(株式)とは企業同士が互いに株式を保有し合う(持ち合い)仕組みのことです。近年「株式持ち合い比率」は低下する傾向ですが、1990年頃は上場株式の時価総額のうち、約3割を政策保有株式が占めていました。東京証券取引所の市場再編により上場基準の流通株式の定義が見直されることになったことも、持ち合い株解消の流れを加速させています。


制作保有が多い企業は徐々に売る方向に

市場再編前の流通株式の計算方法は、

上場株式数-【主要株主(10%以上所有)が所有する株式+役員所有株式数+自己株式数】

でしたが、市場再編後の計算方法は

上場株式数-【主要株主(10%以上所有)が所有する株式+役員所有株式数+自己株式数+国内の普通銀行、保険会社、事業法人が所有する株式+その他取引所が固定的と認める株式】

となりました。これまでは企業間の持ち合い株が10%に満たない株式数であれば流通株式として数えられていましたが、市場再編後はそれらを非流通株式としました。事業法人などが株式を保有の目的で買い、将来に渡り売らないであろうと予測する株式に対して注目し、流動を促したと考えられます。そのため政策保有やグループ内での保有が多い企業は、今後徐々に売っていかなくてはなりません。

また、議決権行使助言会社ISSは政策保有株が純資産比20%以上の企業の取締役選任に反対を推奨しました。これにより株主の投資家たちは大林組や京セラ社長選任に反対票を投じました。三井住友DSアセットや野村アセットマネジメントなどの政策保有に厳しい姿勢を示しています。

制作保有のメリットとデメリット

政策保有の背景は戦後の財閥解体にさかのぼり、旧財閥系企業が外資企業からの買収を避けるために始まったと言われています。企業間で相互に株式を持ち合う場合が一般的ですが、どちらか一方の企業だけが保有する場合もあります。株式の持ち合いにより企業にとっては安定した株主を得られ、経営もより安定的になるメリットがあり、経営陣の合意なく買収をされることもなくなるので、敵対的買収も防げます。関係性が良好であれば新たな事業拡大もスムーズになります。

一方でデメリットもあります。政策保有は長期保有するので、長年にわたり資本の空洞化が起こってしまいます。資本が成長の為に使われず、保有の為だけに使われては効率的な経営が行われず弊害を被ることになります。また、互いに保有し合っている場合は問題ないのですが、片方のみが株式を保有している場合には企業間で不公平な力関係が働き、主従関係が生まれてしまう恐れがあります。

投資家からの目線では政策保有により議決権行使や経営陣との対話に消極的な【もの言わぬ株主】が存在するデメリットがあります。また市場に流通する株式が少なくなり、株式の流動性が下がってしまう可能性があります。

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