はじめに

共働き世帯が増加する中で、また人手不足が深刻化する中で、多くの企業が女性の働きやすい職場づくりを進めています。ですが、中にはお題目ばかりで実態の伴っていない企業もあります。

本当の意味で女性が働きやすい職場を探し出すには、何を見ればいいのでしょうか。4年連続で内閣府の「女性が輝く先進企業」選考委員を務めている筆者の視点から、重要となるポイントをご紹介したいと思います。


選考委員が最も重視する指標

内閣府の「女性が輝く先進企業」表彰選考委員会では、表彰企業を選別するため、さまざまな情報にアクセスしています。中でも、一番重視しているのが、厚生労働省が公開している「女性の活躍推進企業データベース」です。

これは、企業における女性の活躍状況に関する情報を一元的に集約したデータベースです。現在、8,339社がデータを公表しています。関心をお持ちの企業を、検索してデータを見ることができます。公開されているデータの一部をご紹介すると、下記のようなものが含まれています。

(1)労働者に占める女性労働者の割合
(2)係長級に占める女性労働者の割合
(3)管理職に占める女性労働者の割合
(4)役員に占める女性労働者の割合
(5)男女別の平均勤続年数
(6)男女別の育児休業取得率
(7)1ヵ月当たりの労働者の平均残業時間
(8)年次有給休暇の取得率

32の産業別に検索することが可能ですので、産業別の「働き方改革」進捗度を比較することもできます。たとえば、「医療福祉」を選ぶと、現在1,152社がヒットします。関心をお持ちの企業を複数検索し、データを比較することができます。

登録している企業が必ずしもすべての項目を開示しているわけではありませんが、それでも、関心のある業界の主要企業のデータを見ていくことで業界の働き方事情がある程度、見えてきます。

重要なのは現在数値だけではない

表彰候補を選ぶにあたっては、現在の数値だけではなく、過去からの数値の変化も見ています。女性管理職比率が上昇基調にあることは、特に重要です。

最近、急速にデータが改善して目を見張っているのが、男性の育児休業取得率です。3~4年前は0%の企業が多く、あっても10%以下でした。今年は、大手金融機関で60~80%に達しているところも増えています。

ただし、定量データだけ見ても、企業の実態は必ずしもわかりません。共働きで家事・育児・介護を分担していく世代にとって、真に働きやすい企業になっているか、さまざまな開示資料を見て、判断します。

在宅勤務・テレワーク・フレックス勤務・短時間労働など、柔軟な働き方を活用して、育児と両立して働ける体制になっている企業は高く評価されます。

産休・育休中の社員のバックアップ体制が整っているか否かも、重要です。適切なバックアップ体制がないと、産休・育休に入る女性社員のいる部署で残った社員が苦労することになるので、産休・育休を取りにくいムードが広がります。産休・育休のバックアップを所属部署だけの負担としない取り組みが必要です。

産休・育休明けの社員の復帰支援を充実させているかも、大切な指標です。共働きの夫婦が仕事のために出産・子育てをあきらめるのではなく、仕事も子育ても、時には介護も両立できる仕組みが整っていることが欠かせません。

「ESG」の観点からも脚光

今、日本企業にとって、女性の長期雇用促進は単なる努力目標ではなく、差し迫った人手不足の解消のための喫緊の課題となっています。そのための「働き方改革」の進捗を外部からしっかり見守っていく必要があります。

最近、働き方改革の進捗データを見る、新しい主体が現れました。投資家です。年金などの長期投資家は近年、銘柄選別に当たり、財務データだけでなく、非財務データを見ることが重要と考えるようになりました。特に「ESG情報」は重要と考えられています。

ESGとは、E(環境)・S(社会的責任)・G(ガバナンス:企業統治)の3つを総括した言葉です。日本最大の公的年金で156兆円の運用資産(2017年9月末現在)を持つGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、日本株でESG重視の運用を開始すると発表して、一気に注目が高まりました。

GPIFはESG投資の拡大で期待される効果として「企業のESG評価向上のインセンティブになり、ESG対応が強化されれば、長期的な企業価値向上につながる」としています。

近年、不祥事によって株価が急落するだけでなく、存続が危うくなる企業も出るようになりました。ガバナンス不全の企業に投資するリスクが非常に高くなりました。機関投資家はガバナンス専任アナリストを置くなど、投資先のESG情報の収集に力を入れるようになりました。

女性の活躍推進企業データベースは、G(ガバナンス)とS(社会的責任)を評価するための重要なソースとなっています。欧米企業に比べると、日本企業のESG情報の開示は始まったばかりですが、今後一段と重視されるようになると思います。

投資家、企業が重視するようになったデータソースを、ぜひ読者の皆さんも直接ご覧になってください。

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