はじめに

日本ではデフレに逆戻りするリスクも

国内にも懸念材料があります。相次ぐ値上げによる消費者の「値上げ疲れ」、それが買い控えや節約志向につながっているという点です。4月30日に帝国データバンクが公表した「食品主要195社」価格改定動向調査によると、主な食品メーカー195社における家庭用を中心とした5月の飲食料品値上げは417品目で前年同月の837品目に比べて420品目・50.2%減と、5カ月連続で前年同月を下回りました。値上げの動きは完全にピークアウトした感があります。
帝国データバンクによると、物価上昇に対し実質賃金の伸びが追い付かないことを背景に、店頭では安値攻勢が目立つプライベートブランド(PB)製品で購買量が伸長するなど節約志向は根強いといいます。同調査は、量販店やコンビニなどでは一部製品を値下げする動きもあるなか、前年に比べてナショナルブランド(NB)品を中心に大幅な価格の引き上げが難しい局面を迎えていると分析しています。
これが企業業績にも反映されてきて、すでに決算発表が一巡した2月決算の小売業では売上高の伸び率が前期の半分に、営業利益の増益率が前期実績の15%から5%と3分の1に減少する見通しです。ただ、伸び率は落ちても利益率はまだ維持できるのが救いです。これまでは原材料高を販売価格に転嫁することで高い利益を確保できましたが、今後はそれができないとするとだんだん利幅がとれなくなってくる恐れがあります。

また、こういう動きが広がれば、せっかく定着しつつあるデフレ脱却が危ういものになってしまいます。日本株が2023年度、記録的な上昇を演じた要因のひとつが、デフレ脱却でした。長年、日本経済の元凶であったデフレが終焉したというのが大きな材料でした。それが、またデフレに逆戻りするリスクが出てきたとなれば、日本株の上値が重くなるのも当然でしょう。

さらに気がかりなのは日銀の利上げです。市場では7月とか10月とかいわれているようですが、あくまで物価と賃上げの好循環があってこそ。そのココロは実質賃金がプラスになって消費がしっかりしてディマンドプルのインフレになるということです。

そうではなく、数字のうえでCPIが2%超えたなど、いっても意味がありません。消費者の買い控えや企業が値上げをためらうような環境なのかを判断材料にするべきです。それを見ないで金融正常化の路線ありき、で走ると、景気腰折れにつながりかねません。それが国内の大きな懸念です。こうしてみると日本株はまさに「内憂外患」の状況で、当分上値が重いと思われます。

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