はじめに

衛星ビジネスは「夢」ではなく実需の話

そのステージの序盤“かもしれない”テーマの1つに「宇宙ビジネス」があります。2024年2月17日、2023年3月には打ち上げに失敗した日本の主力ロケット「H3」の打ち上げが成功し、前回のリベンジを果たしたことは主要ニュースとして取り上げられていたので、この打ち上げに関するニュースを目にされた方は少なくないでしょう。

現在、宇宙ビジネスでは米国と中国を先頭グループとして、各国がしのぎを削っている状況です。米国のSIA(衛星産業協会)によると、2021年の宇宙産業の市場規模は前年比4.9%増の4690億ドル(2021年時点のドル/円相場換算で53兆円程度)。2017年の外資系証券会社のレポートでは、同ビジネスは2040年までに100兆円規模になると試算されていましたが、現在はさらに予測数字が増えているかもしれません。

とはいえ、日本の宇宙ビジネス市場の規模は、2018年時点で1兆2000億円程度と小さいのが現状。また、宇宙ビジネスと一口にいっても、人工衛星を活用した「衛星サービス」、衛星の製造、衛星の打ち上げに必要なインフラ整備、衛星情報の送受信に関する部品や機器などさまざま。この中で、株式市場においていまホットなのが、商用有人飛行などの「非・衛星サービス」です。

実は、「衛星サービス」に関しては、三菱重工やNECなどの有名企業を筆頭に、人工衛星に関連する部品や素材などを手掛ける企業が少なからず存在します。また、スカパーJSATホールディングスのように、衛星ビジネスを展開している企業もありますが、今のところ、これらの「衛星関連ビジネス」に、株価を大化けさせるようなエネルギー(夢)はありません。というのも、衛星ビジネスはすでに実需のビジネスとして成立しているため。どの程度業績に貢献するかを予測することが可能な分野だからです。もちろん、今後の衛星ビジネス業界の動向や政府の関わり方によっては、大きく飛躍する日本企業が出てくる可能性はあります。しかし、それはあくまで実需ベースのお話であり、「夢」ではありません。

2022年12月、民間では世界初となる月面着陸を目指し、スタートアップ企業ispace(アイスペース)の月面着陸船が打ち上げられました。結局、月面着陸の挑戦は失敗に終わりましたが、このニュースは株式市場でも話題になりました。それは、このispace社が、着陸へのトライの直前である4月12日に東証グロース市場に上場を果たしたからです。同銘柄の株価は、公開価格254円に対し、1週間で2373円まで買われました。

しかし、その月面着陸が失敗に終わったことで株価も急落。2024年の4月5日には705円まで値を下げました。ただ、同社は年内に2回目の打ち上げを実施する計画です。ここで着陸成功となれば、株価は再び噴き上がる可能性が高いでしょう。それ以前に、株価が動意付くかもしれません。「着陸が成功することで同社の業績が将来的にこうなる」といった憶測は二の次で、ひとまずは着陸の成否のみが焦点になりそうです。

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