はじめに

オフィス需要の後退以外の要因とは?

加えて、2024年に入ってからの東証J-REIT指数の下落には、別の要因も重なりました。それは新NISAのスタートです。

J-REITは新NISAの成長投資枠で購入できます。4月25日時点の分配金利回りは、全銘柄平均で4.46%ですから、高利回り狙いの投資家にとっては悪くない投資対象であるはずです。そうであるにも関わらず価格が下げ続けたのは、J-REITを投資対象としているJ-REITファンドの存在があります。

J-REITファンドとは、いわゆる追加型株式投資信託の一種で、株式ではなくJ-REITを主要投資対象として運用されます。そしてその多くが毎月決算を行い、その都度、分配金を支払う毎月分配型になっています。この「毎月分配型」が問題で、実は新NISAの成長投資枠では、購入できないことになっているのです。

そのため、新NISAがスタートする時までJ-REITファンドで運用していた人たちがそれを解約し、他の新NISAの対象となっている投資信託に乗り換えたと考えられるのです。

古いデータで恐縮ですが、2023年8月時点におけるJ-REITの投資部門別保有比率は以下のようになります。

・政府・地方公共団体=0.0%
・都銀・地銀等=4.6%・・・・・・①
・信託銀行=45.2%・・・・・・②
・①+②のうち投資信託=35.7%
・①+②のうち年金信託=0.6%
・生命保険会社=1.5%
・損害保険会社=0.1%
・その他の金融機関=4.6%
・証券会社=4.2%
・事業法人等=8.6%
・外国法人等=23.7%
・個人その他=7.5%

投資信託や年金信託は、信託銀行を経由してJ-REITに投資しているので、信託銀行の保有比率である45.2%のうち36.3%は、投資信託と年金信託によって占められています。この数字を見ての通り、圧倒的にJ-REITを保有しているのは、投資信託ということになります。対して、個人の保有比率はわずか7.5%ですから、多くの個人は投資信託を通じて、J-REITに投資していることになります。

では、投資信託の売買動向はどうなっているでしょうか。これは東証が公表している投資部門別売買動向を見れば分かります。2023年から2024年にかけての売買動向を金額ベースで見ると、次のようになります。

<2023年>
1月=89億7221万5000円の買い越し
2月=344億1676万3000円の買い越し
3月=287億103万8000円の売り越し
4月=159億3849万5000円の買い越し
5月=41億6954万3000円の買い越し
6月=72億8507万3000円の買い越し
7月=50億8619万5000円の売り越し
8月=179億9126万4000円の売り越し
9月=236億8328万9000円の売り越し
10月=176億7865万円の売り越し
11月=25億7373万1000円の売り越し
12月=151億1615万3000円の売り越し

<2024年>
1月=62億5334万5000円の売り越し
2月=64億4915万円の売り越し
3月=32億1133万7000円の買い越し
4月=110億8278万1000円の買い越し

3月、4月になってようやく買い越し基調になっていますが、2023年7月から続いた売り越しが、J-REIT市場に大きな影響を及ぼしたことが推察されます。

問題は、NISAを要因としたJ-REIT市場の売り圧力がいつまで続くのか、という点ですが、3月末時点で、J-REITファンドの運用本数は156本あり、その純資産総額は4兆6340億3600万円もあります。この全額が解約されることはないにしても、NISAに起因した売り圧力は当面、続くものと思われます。

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