はじめに
疾病が原因の自動車事故は補償できるか?
自動車保険には保険金を支払う際の指針となる約款という決まりがあり、各補償項目別に保険金を支払わない場合、という条項が記載されています。
人身傷害保険の支払わない場合には、
1.戦争・内乱などの事変または暴動
2.地震・噴火またはこれらによる津波
3.核燃料物質の放射性、爆発性、その他これらの特性に起因する事故
などが挙げられ、これらの損害は支払えません。
他にも
1.被保険者の故意または重大な過失により本人に発生した傷害による損害
2.被保険者が麻薬・大麻・覚せい剤等の薬物使用で正常な運転ができなかった場合の本人に発生した傷害による損害
3.被保険者が道路交通法に定める酒気帯び状態で運転した場合の本人に発生した傷害による損害
4.被保険者の脳疾患、疾病または心神喪失によって、本人に発生した傷害による損害
などが、支払わない場合に挙げられています。
上記の1~3の要因は、運転者本人に大きな責任があり、当然支払対象外と納得できます。4の疾病が原因の事故による傷害は、突然起こる事であり、想定外の場合が多いですから、支払えないというのは意外ですが、心筋梗塞で意識を失い、電信柱に衝突し死亡、といったケースでは人身傷害保険金は支払えないということになります。
では、健康に起因する事故はどのくらい起きているのでしょうか。個人のデータではありませんが、事業用自動車のドライバーについて、報告されている健康状態に起因する事故データを紹介します。
国土交通省の調べによると、平成25年から令和元年の7年間で健康起因事故を起こした運転者は1891人。そのうち、死亡した運転者は327人で、心臓疾患53%、脳疾患12%、大動脈瘤および大動脈解離14%という結果でした。
一般ドライバーに比べ事業用ドライバーは、雇入れ時の健康診断実施や、乗務前点呼時の健康管理が義務付けされているにもかかわらず、これだけの健康起因事故がおきているのは驚きです。疾病を原因とする事故が、私たち一般ドライバーにいつ起こってもおかしくないといえます。
保険金を支払わない場合には、「本人に発生した傷害」と記載されていますので、同乗者は支払対象です。また、相手がいる場合の対人・対物、自身の車両損害などは補償の対象となります。ですが、本人死亡の場合、人身傷害で払われるはずだった逸失利益等が支払われませんので、残された遺族には経済的に大きな痛手となります。
生命保険で補填
先のデータから見てわかる通り、突然意識を失って事故に至る原因として、心筋梗塞・心不全などの心疾患、くも膜下出血・脳内出血等の脳血管疾患などが約8割を占めています。
死亡後経済的に助けが必要な家族がいる場合、特に子育て中の家計を支えている世代は、ある一定期間、特定疾病に備える保険に加入しておくのもひとつの方法です。
教育費のかかる10年間、特定疾病1000万円のような保険にスポットで加入すれば、35歳男性、保険料月約5000円で加入できる保険があります。毎日自動車通勤をしているような人には必要な保障かもしれません。