はじめに

認知症の診断を受ける前にやっておきたいこと

口座が凍結される前に、認知症の診断を受ける前に準備しておきたいことは次の5つです。

(1)元気なうちに財産の棚卸をする
(2)使用していない口座の整理をする
(3)現在預けている金融機関で認知症に備えた商品があるかどうかを確認する
(4)「財産管理委任契約」「任意後見契約」を利用できるようにしておくのか検討する
(5)預けている金融機関が「財産管理委任契約」「任意後見契約」に対応しているか事前に確認する。

順番に見ていきましょう。

(1)元気なうちに財産の棚卸をする

具体的には、
・不動産はどこに何を所有しているのか
・預貯金・有価証券・生命保険等の財産はどこの金融機関等と取引をしているのか

これを現在わかる範囲で財産目録にまとめて一目でわかるようにします。そして、動産の名義は自分の名義になっているか確認し、生命保険の受取人の確認をしましょう。

(2)使用していない口座の整理をする

現在使用していない預貯金口座があれば解約します。

(3)現在預けている金融機関で認知症に備えた商品があるかどうかを確認する

最近、代理人を選任しておくことができる金融機関も出てきました。高齢の預金者の預金引き出しに関しては柔軟な対応や、専用の金融商品を利用するなど口座の凍結を防ぐ手段も出てきました。そのような商品があるかどうか、ご利用の金融機関を確認してみてください。

「財産管理委任契約」と「任意後見契約」

(4)「財産管理委任契約」「任意後見契約」を利用できるようにしておくのか検討する

金融機関は取引制限を避けるために、「成年後見制度」の利用を勧めています。

成年後見制度を利用すると「後見人」という登場人物が出てきます。後見人とは判断能力が衰えてきた際に財産管理(不動産や預貯金、有価証券等の管理、手続き等、財産を守ること)や身上監護(各種契約の締結など)を代わりに行う人のことです。

判断能力が無くなったあとに利用するのは「法定後見制度」です。家庭裁判所が後見人を選任します。

判断能力があるうちに利用できるようにしておくのは「任意後見制度」で、自分自身が将来判断能力が無くなった際にお願いする人を決めて契約しておくことができるというものです。実際は任意後見契約を単独で締結するよりも「財産管理委任契約」とあわせて契約することが多くあります。

後見制度は判断能力が無くなってからでないと利用できないのに対して、財産管理委任契約は判断能力があるうちから利用することができます。足腰が悪く銀行まで行くことがしんどいなど、身体の事情を理由として預貯金の引き出し等をお願いすることができます。

お願いする事項は委任者と受任者が契約書内で自由に決めることができます。受任者に特別な資格は必要ありません。例えば信頼できる家族や友人、知人を受任者にすることができます。また、弁護士、司法書士、行政書士などの専門職を受任者にすることも可能です。

ただし、家族のだれか1人が預貯金の管理をしているとなると将来相続が起こった際のもめごとになる可能性も含んでいます。預金者のためではなく私的流用の疑いが出てきますのでレシートや領収書を取っておく。出納帳で出し入れを明確にするなどの管理は必ず行うようにしましょう。

(5)預けている金融機関が「財産管理委任契約」「任意後見契約」に対応しているか事前に確認する。

利用している金融機関が、「財産管理委任契約」「任意後見契約」に対応しているか確認しましょう。対応していないということであれば取引の金融機関の変更も視野に入れます。

子供から親へ話をするのはなかなか難しいこともあると思います。そのような場合は、終活・相続の専門家と相談しながら「このままなにもしないとどうなるか」を家族で認識してもらえるようにしましょう。

終活カウンセラー・行政書士 藤井利江子

この記事の感想を教えてください。