はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は深野康彦氏がお答えします。
現在、実家住まいで、給料から所得税は引かれていません。申告は、国民健康保険だけで毎年収入はゼロで出しています。しかし実はFXをしているので、そちらで申告しようと思ってるのですが、なにかよい方法がありましたら教えてください。また、FXで青色申告した場合のメリットとデメリットを教えてください。
(20代後半 独身 男性)
深野: 所得税が引かれていないのは、さまざまな控除を差し引いた結果と考えられますので所得税に関する申告自体に問題はないと思います。
ただ、国民年金保険のための申告をされているようですが、勤務先は健康保険(いわゆる「社会保険」)ではないのでしょうか。
あくまでもいただいた質問からの推測ですが、小規模の企業に勤務されていて、給与は得ているが健康保険などは勤務先ではなく、各自が国民健康保険(国民年金含む)に加入する勤労形態なのだと判断して、回答させていただきます。
FXの税制は?
FX(外国為替証拠金取引)を行っており、そちらで申告をしようと考えられているようですが、現在、FX取引から得た利益は申告分離課税となっています。
給与所得などと合算して申告(「総合課税」という)することはできなく、あくまでもFX取引を含む申告分離課税扱いとなっている金融商品、たとえば日経平均株価の先物取引等を通算しての申告になります。
上場株式等も申告分離課税扱いですが、FX取引との損益通算は認められていないため、合算して申告することはできません。
FX取引には、上場株式等のような特定口座制度がないことから、原則、確定申告が義務づけられています。ただ、確定申告によって世帯所得が増え、結果として国民健康保険料が増加する可能性がある点にはご注意ください。
余談ではありますが、国民健康保険に加入している方は、確定申告が必要な金融商品を利用すると国民健康保険料が高くなってしまう場合があるため、「申告が必要な商品は控えた方が賢明」と言われることもあります(とくに定年退職されたリタイア層)。
FX取引で申告する場合
さて、お話を戻すと、FX取引で申告しようと考えるのであれば、まず会社組織を作ります。
現在の給与は請負契約にして企業から支払ってもらうかたちをとり、FX取引を会社名義で行い、その会社から給与をもらうかたちにしてはいかがでしょうか。
投資に使った費用のほとんどは経費にできる上、社会保険(厚生年金)扱いにすることもできます。
国民健康保険のままであったとしても、国民年金基金(現在でも加入可能と思われます)、小規模企業共済、個人型確定拠出年金(国民年金基金および付加年金と合算)などに加入できることから、さまざまな所得控除を利用しながら老後の準備などもできます。
さらに、ご家族がいらっしゃるのであれば、生命保険も会社で加入をして、万一が起こった際には家族に死亡退職金を支払うようにしておけば、生命保険も会社持ちにすることができるなど、勤労者である以上のメリットを受けられると思われます。
ただし、会社の確定申告は個人の確定申告よりも労力がかなりかかります。経費になりますので、税理士の方に頼まれるとよいでしょう。
青色申告のメリット・デメリット
また、FXで青色申告する場合のメリット・デメリットについてですが、青色申告ができるのは、不動産所得、事業所得または山林所得を生ずべき業務を行う居住者となっています。
FX取引を事業所得扱いになるようにしておくか、FX取引以外に先の3つのいずれかの所得を得る必要があります。
加えて、青色申告をする場合は、その年の3月15日までに届出書を所轄の税務署に提出する必要があります。
晴れて青色申告者になれば、青色申告特別控除(要件によって10万円または65万円)、青色事業者専従者給与、各種引当金の繰り入れ、純損失の繰越控除または繰戻還付、棚卸資産の評価方法についての低価法採用などのメリットがあります。
デメリットとしては、帳簿書類の備え付けが義務となる点です。その帳簿書類に業務に関する取引内容を正規の簿記の原則に従った複式簿記の方法によって記入。確定申告の際には貸借対照表および損益計算書を作成し、申告書に添付する必要があります。
ただし、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳の5種類の補助簿のみの簡易な記録の方法によることもできます。
いずれにしても、帳簿付けなどにかなりの量の事務が発生することになります。