はじめに

企業は配当拡大傾向

追い風となりそうなのは上場企業が配当を拡大していることです。2025年3月期に増配を予定しているのは上場企業全体の4割に当たる約900社で過去最高の企業数だと報じられています。企業が配当を増やす傾向にあるのは東証が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請を2023年3月に掲げたことが影響しています。

要請のポイントとして「自社株買いや増配が有効手段ではあるが、一過性の対応ではなく、継続して資本コストを上回る資本収益性を達成し、持続的な成長を果たすための抜本的な取組みを期待するもの」と、かなり強めの内容で謳い、上場しているすべての企業に促しています。

2024年3月期の自己資本比率は過去最高水準の42%です。一般的に40%以上であれば倒産しにくいとされていて企業として存続の安全圏内を確保しています。このような状況であれば株主から資本効率のアップを望まれるのも必然です。報道によれば、配当総額は前期比8%増の約18兆円と4年連続で過去最高となる見通しです。増配企業の割合は前期比7ポイント増の40%と3年ぶりの伸び率です。

自社株買いへ向かう流れも

政策保有株の解消が自社株買いへと向かう流れも無視できません。政策保有株とは企業が取引先との関係維持や強化を狙って保有する株式で、金融機関と事業会社、製造会社と販売会社などで相互に株式を保有する「持ち合い」の形が多いのが特徴です。

政府が2015年から成長戦略の一環として企業統治の改善や資本効率の向上を企業に要請したことで、解消は一段と進んでいました。また昨年9月、損害保険ジャパンとビッグモーターとの間で互いの顧客を紹介し合う不適切な保険金請求の事件以降、本格的に解消が促され、損害保険大手4社(東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険)は約6.5兆円分の政策保有株を数年かけて全て売却することを決定しました。当初は損害保険ジャパンとビッグモーターの2社間の問題でしたが、損害険会社全体の問題に飛び火しました。普段、何気なく流れているニュースにも株価に大きく関わる様々な事象が隠れています。

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