はじめに
ここ1、2年、大規模な「株式分割」が個人投資家の間で話題になっています。特に、2023年7月に実施されたNTTの大規模株式分割は、今でも大手株系掲示板などでコメントを集めるなど注目を集めています。では、「株式分割」とはどのようなもので、何を目的に行われるのでしょうか?
今回は、株式分割自体の説明から、分割後の株価動向などに注目。株式分割が株価にどう影響を与えるのかを見ていきましょう。
株式分割のメリットとデメリット
2023年5月12日、ある企業の発表が株式市場をざわつかせました。それは、NTTの大幅株式分割。NTTは翌月末の6月30日に、「1株を25株」に分割することを打ち出しました。株式分割は、文字通り株式を分割すること。基本的には1対2(2分割)や1対3(3分割)程度の割合が多く、時には1対5(5分割)程度のケースも見受けられますが、10分割以上はレアケースです。
実はここ数年、株式市場では空前の「株式分割ブーム」が起きています。2022年は97社、2023年は151社が株式分割を実行。2024年は、1月から6月の上半期の半年間で実に116社と、昨年を超えるペースで上場企業が株式分割を行っています(筆者調べ)。
株式分割を行うメリットはなんでしょうか。まず、企業側の視点だと、株式分割を実施するメリットは、「1単元ごとの投資金額が引き下がる」ことによって、その企業の株式に投資する投資家が増えることが挙げられます。株主数が少ない企業にとっては、株式分割を行うことで、証券取引所が定める「上場維持基準」をクリアする効果が期待できるでしょう。
東証は、プライム市場の上場維持基準の株主数を「800人以上」と定めています。スタンダード市場は400人以上、グロース市場は150人以上です。基準となる株主数を下回った場合、一定期間以内にその基準をクリアしないと上場廃止のリスクが浮上します。株式分割によって1単位を購入するための金額が下がることで、それだけ投資家がその株式を買いやすくなるため、株主数の増加が期待できるのです。また、単純に発行済み株式数が増えるため、市場に出回る株式の数(流通株式数)の増加効果も見込めます。この「流通株式」も上場維持基準の1つです。ただ、株主数の増加は事務経費の増加にもつながるので、これは企業側にとってはデメリットになるでしょう。
冒頭で紹介したNTTが大幅な株式分割を行う直前の株価は4400円程度。つまり、1単元=100株を購入するのに、約44万円が必要でした。しかし、1株→25株の株式分割後は、株価が「4400円÷25=176円前後に下がるため、1万8000円弱で買えるようになります。1単元当たり買うのに必要な投資金額が下がること。これは、投資家にとってメリットにほかなりません。