はじめに

1.マーケットは上がり続けるか

筆者はお客様から一括投資のご相談を受けるとき、まず「今後マーケットが上がり続けると予想されているか?」と伺うことにしています。投資信託に限らず、投資で利益を上げるためには、安く買って高く売る必要があります。つまり、今後もマーケットが上がり続けるのであれば、少しでも割安なうちに一括投資を行うのは意味のあることでしょう。

この質問に対し、「マーケットって上がったら下がる、下がったら上がるということを繰り返すって言いますよね。そうであれば、上がり続けるのは考えにくいですよね。」とおっしゃる方が大半です。

筆者も右肩上がりで永遠に市場が成長することが分っていれば、なにも積立ではなく一括もオススメできると思うのですが、残念ながらそんな予測をする方は恐らくだれもいないでしょう。もちろん、市場が上がり基調の時に一気に投資を行い、下がる兆しが見えた瞬間に売却できれば良いのですが、そういうことをできる方も恐らくだれもいないでしょう。

一括投資をすると、その時の買った値段が鮮明に記憶に残り、その後の値段の変動がとても気になるものです。その点、積立の場合は、良くも悪くも購入単価が平準化されるため、市場の動きに対して心の平静が保ち易くなるという特徴があります。

2.投資する金額は資産の何%か

二つ目は、一括投資にあてようと思っている金額が、ご自身の資金全体の何%に当たるのかという質問です。

仮に、一括投資に充てようと思う金額が1000万円でその他のご資金も潤沢にあるのであれば、その後値段が下がってもまた上がるまでの時間を許容できるかも知れません。しかし、その1000万円を使う目的が間近にあり、それが目減りしてしまったら人生設計が狂ってしまう方では、市場のリスクへの許容度がまったく異なります。

もちろん前者であっても、投資の値段の上がり下がりが精神上大きな苦痛を伴う場合はやはり一括投資はしない方が良いと考えますし、後者は間違いなく一括投資を行ってはいけない方となるでしょう。

例えばリーマンショックの際はどこのマーケットも大きく値下がりしました。米国株式は半年間で50%程度値下がりしたと言われています。思い切って一括投資した1000万円がいきなり半分くらいに目減りしたら、生きた心地もしない方が大半ではないでしょうか? その後値を戻すまでにかかった時間が5年くらいと言われています。そんな長い期間含み損を抱え続けなければならないのですから、途中で投資を投げ出してしまった方がいても不思議ではありません。

一方、値段が半分になっても積立を継続していた方は5年も待たずに元の値段に戻りさらに継続することで大きな利益を得た方が大半でした。筆者も当時は積立を継続していましたが、すべての投資信託が同じようなペースで戻ったわけではありませんでしたが、それでも2年程度のスパンでは大きなマイナスが解消されたことを覚えています。

つまり、値が下がった時こそ、さらに追加投資をするのだという強い意志が持てる方以外は、やはり1000万円という大きな原資があったとしても投資時期は分散し、下がっても自動的に買い付けができる仕組みに身を置いた方が精神的にも良いのではないかと考えます。

3.後悔しない投資か

三つ目は、家族との関係性です。お金はやはり使ってこそ価値があります。使う目的の多くが家族のためであるという方が多いことを考えると、やはり家族が幸せになるために「使える状態」を目指して投資をした方が良いだろうと思います。

例えば、慣れない投資で思い切って大きなお金を一括で投じ、その後値が下がって大きな損失を被ってしまったとしましょう。すると、その経験が忘れられず、その後の家族の大切なイベントがある度に「あのとき投資をしていなかったら、もっとお金があったのに」と後悔し続けるのではないでしょうか?

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