はじめに

中小型株ファンドの適正規模は300億円

仮に、日本の中小型株式を投資対象とするファンドの純資産総額が1000億円になったとしましょう。そのうち3%をある銘柄に投資したとすると、投資する金額は30億円になります。

時価総額で言うと、中型株は1000億円以上2000億円未満、小型株は1000億円未満とされていますが、小型株のうち大半は時価総額が500億円以下と言われています。

仮に時価総額が500億円しかないような銘柄に30億円もの買いが入ったら、その時点で株価が急騰してしまいますし、逆にポートフォリオから外すとしたら、株価が急落してしまいます。

また、買うにしても売るにしても、それを吸収するに十分な売りや買いが無かったら、売買そのものが成立しません。結果、ファンドの売り買いで株価が乱高下してしまい、それが運用成績にとってマイナスになる恐れが生じてしまうのです。

このように、市場規模や流動性の小さいマーケットを投資対象にしたファンドで純資産総額の規模が大きくなると、それが運用するうえでの足かせになってしまう恐れがあります。ちなみにかつて中小型株式のファンドを運用している担当者5人に、その適正規模を聞いたところ、5人とも300億円前後と答えました。

日本で数兆円規模のアクティブファンドは運用できるか?

もちろん、純資産総額が10億円前後の小規模ファンドは論外で、この手の小規模ファンドはさっさと償還させるべきだと思うのですが、ともかく大事なのは投資先である市場の規模感に合った純資産総額のファンドを選ぶことです。

特にアクティブ型ファンドはこの点が重要で、余りたくさんの資金が集まり過ぎて組入銘柄を増やさざるを得なくなると、今度は運用成績がインデックスファンドとあまり変わらなくなるケースもあります。

米国の株式市場のように、その時価総額が世界の株式市場の50%を占めるような巨大マーケットであれば、恐らくアクティブファンドでもかなりの資金を吸収できると思います。

ちなみに米国で最大級のアクティブファンドである「ザ・グロース・ファンド・オブ・アメリカ」の純資産規模は、日本円にして41兆円ですが、米国株式市場の時価総額は約7700兆円ですから、41兆円のアクティブファンドでも十分に運用できるはずです。

これに対して、日本の株式市場の時価総額は931兆円です。割合で考えれば、日本でも4兆円規模のアクティブファンドは運用できそうな気もするのですが、日本企業の時価総額は、米国企業のそれに比べてかなり小粒です。その点を考慮すると、日本株を対象にした数兆円規模のアクティブファンドを運用するのは、かなり難しいと言わざるを得ないのかも知れません。

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