はじめに

今後のリスクは「円高による業績下方修正」

そもそも日本株は7月に高値をつけた時点で、PER(株価収益率)が過去平均に対して大きく上振れて割高感がありました。現在のPERは日経平均・TOPIXとも15倍台で過去平均並み、割高感は払しょくされています。こう考えると日本株は、フェアバリューに戻り、居心地のよい水準にあるといえるのではないでしょうか。

バリュエーション面で過去平均にあり、だからフェアバリューだと述べましたが、問題は今後の業績下方修正のリスクです。懸念材料はいうまでもなく円高です。

ただ、現行の140円台半ば程度までの円高であれば、下方修正のリスクは少ないでしょう。円高による業績下方修正のリスクというのには少々、誤解があります。たしかにここまで円高に戻れば、この先の「円安による業績上振れ期待」は消滅したとみてよいでしょう。

しかし、企業の想定為替レートは145円程度であり、実勢レートが想定レートに一致しただけです。また、昨年度の期中平均も145円であり、したがって145円を想定している現在の企業業績予想には、そもそも円安によるかさ上げは織り込まれていないのです。こうしたことから、現行の140円台半ば程度までの円高であれば、下方修正のリスクは少ないと考えます。では、次の問題は円高がここまでか、130円台まで、さらにその先まで進むのか、という問題ですが、筆者は現状近辺でいいところだと考えます。理由は以下の通りです。

1)急激な円高を招いた背景にあったキャリートレードですが、キャリーを積み上げた未曽有の投機は解消されています。CFTC(米商品先物取引委員会)がまとめた投機筋(非商業部門)の週次ポジション動向をみると、対ドルの円の売り越しは解消され、むしろ円買い越しに転じている状況です。つまり巻き戻るようなキャリートレードが積み上がっていないのです。

2)円高を予想する大きな理由となっているのが日米金利差縮小ですが、そのシナリオはほぼ市場に織り込まれていて、これからさらに相場を動かす材料になるか疑問です。また、金利差が向かうのは縮小ですが、水準という意味では絶対的に大きな金利差が残り続ける点も一本調子に円高が進まないと考える理由です。

3)為替レートを決定するのは金利差だけでなく、経常収支などのフローを考える必要もあります。日本がすでに貿易立国ではないことや日本の産業競争力の衰退など「構造変化」による円安要因は残り続けることになります。

以上のことからドル円相場は今後、現在の水準で落ち着きどころを探る展開だと考えられ、企業業績への影響は限定的になるとおもわれます。

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