はじめに

「1億円の壁」とは?

一方、金融所得課税は他の所得と合算されることなく課税される「申告分離課税」です。厳密にいうと、利子所得は申告不要で20.315%の税金が自動的に差し引かれますし、証券取引における特定口座では、源泉徴収ありを選べばこちらも自動的に税金が差し引かれる仕組みです。配当は場合によっては他の所得と合算できる総合課税を選択することもありますが、ここではまず金融所得は他の所得と合算されることなく一律20.315%の課税で税金処理が終了するという点がポイントです。

もちろん一律の税率であれば、公平ですからなにも問題にはならないのでしょうけれど、税金は応能負担が原則とされているので、お金持ちの金融所得については、もっと税金をとっても良いのではないかと議論されている訳です。

実際、所得が多い方ほど金融で得られる収入が多いというデータもあるようで、ここに対して「1億円の壁」という言葉も存在します。

1億円の壁とは、所得に対する所得税の負担率は所得に応じて増えていくものの、所得が1億円を超えると減少するという事象を指しています。

例えば所得が2000万円超3000万円以下だと負担率は20%程度であるところ、5000万円超1億円以下では、26.3%となります。これが1億円超2億円以下になると25.9%へと低下しさらに、50億円超100億円以下の層では15.7%となるそうです。(国税庁「申告所得税標本調査」2022年より)

財務省の分析によると、2020年所得が1億円を超えた納税者は1万9000人もいて、これまでご説明したような税金の計算方法の仕組み上納税額が比較的少なくて済むような資産での所得を多く保有している特徴もあったそうです。

もちろん金融所得課税が強化されると、それらの富裕層が日本を嫌い海外に出て行ってしまう可能性もあり、単純に進行する議論ではなさそうですが、税の仕組みという点では学びの大きな話題であったのではないかと思います。

いたずらにiDeCoやNISAの課税が強化されるかも知れないから、辞めた方がいいなどと考えずに、あらためて税のメリットを享受できるところは最大限に取り込んで、資産形成を継続する意思を固めていただけると良いかと思います。

【参考資料】
日本経済新聞「金融所得課税、自民党総裁選争点に浮上 石破氏の強化方針に小泉・小林氏反論」
オリックス銀行「【2023年版】金融所得課税とは?仕組みや1億円の壁についてわかりやすく解説」
日経ビジネス電子版「自民総裁選で注目の金融所得課税とは 石破氏が猛反発浴びる理由」

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