はじめに

今回は最近、株式分割を行う企業が増えている事についてお伝えしたいと思います。昨年、株式分割を行った企業は150社以上に上ります。株式分割とは、既に発行済の株式(1単元)を複数の株式に分けて、株式数を増やすことを指します。分割により株価が低くなり、流動性が高まり多くの投資家が商いに参加できるようになります。この株式分割が増えている傾向にも東証による「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請の背景があります(前回の記事では東証の要請により政策保有株式の売却と政策保有縮減に伴う売り出しが増えている旨についてお伝えしています)。


東証の狙い

東証では個人投資家が投資しやすい環境を整備するために、望ましい投資単位として「50万円未満」という水準を明示しています。上場内国株券の発行者に対して、望ましい投資単位の水準以上(50万円以上)で株式が売買されている場合には、事業年度経過後3か月以内に、50万円未満の水準へ移行するための、当該発行者の投資単位の引下げに関する考え方及び方針等を開示するよう義務付けています。

投資単位が50万円以上の会社の割合は、近年10%を下回る水準で推移していて、2024年3月末時点では、93.3%(3573社)の会社が50万円未満となっています。プライム市場では88.7%(1464社)、スタンダード市場では96.3%(1549社)、グロース市場では97.7%(560社)が50万円未満となっています。対して50万円以上の会社は6.7%(257社)という状況です。東証は、2022年10月27日付で、投資単位が50万円以上の会社に対して、投資単位の引下げに係る検討について要請を行いました。

投資単位の分布状況を見ると3市場全体で10~20万円未満の会社が一番多く28.9%(1110社)、次が5~10万円未満20.5%(786社)、続いて20~30万円未満15.9%(609社)という順です。投資単位50万円以上の会社で一番多いのは50~100万円未満で全体の5.4%(207社)、次が100~150万円未満0.6%(26社)です。

今月分割を予定している企業は60社

これまで投資単位を巡る経緯として東証は1990年に個人投資者が投資しやすい環境を整備すべく、上場会社に対して投資単位の引下げの要請を開始し、2001年に上場規則の努力義務として、「50万円未満」の水準が望まれる旨を明示して、前途のとおり50万円以上の会社に対して、投資単位の引下げに係る考え方及び方針等の開示を義務化しました。

随分と長い年月をかけて施してきましたが、昨年3月の要請後に分割を発表した会社は昨年10月25日時点で約70社あり、本腰を入れた促しの効果の表れと思われます。また今月、分割を予定している企業は60社あります(9月27日権利落ち日)。

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