はじめに
日本株の上昇基調が鮮明になりつつあります。日経平均株価は25日移動平均や200日移動平均を次々に上抜け、一時3万8000円台を回復しました。
日本株上昇の要因とは?
騰勢が強まったのは、米連邦準備制度理事会(FRB)が9月17-18日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.50%引き下げたことがきっかけです。通常の変更幅(0.25%)の倍となる幅で利下げを開始したことを受けて、米国景気のソフトランディング(軟着陸)期待が高まり、米国株式市場ではダウ平均株価やS&P500が相次いで史上最高値を再び更新しました。足元の日本株の上昇は米国株高に象徴される「リスクオン」が日本株相場にも波及したことが第一の要因だと思われます。
少し前までは米国の利下げは米国株(およびそのほかの地域の株価)にとっては追い風ですが、円高の要因にもなるため日本株にとっては必ずしもポジティブな材料ではないとみなされていました。事実、9月に入ってからFOMCまでの期間の日本株相場は円高進行に歩調を合わせるように上値の重い展開が続いていたのです。
ところがFOMCを境に円高が一服しました。実はこれが、日本株が上昇に転じた第二の理由で、短期的な相場への影響度という意味では第一の要因(米国のソフトランディング期待)よりも、こちらのインパクトが大きいと考えています。
なぜ円高が一服したのでしょうか。それについてはすでに前回の記事で、以下の三つの理由を述べています。第一に、投機筋の記録的な円売りは解消され円高へ巻き戻すポジション自体がないこと、第二に、米国利下げ・日本の利上げという金融政策の方向性の違いはすでに織り込み済みであること、第三に、金利差以外の構造的な円安要因が依然として存在すること、です。以上の理由から円高も1ドル140円前半がいいところではないかと述べました。
短期的な相場への影響度という意味では第一の要因(米国のソフトランディング期待)よりも、円高一服のインパクトが大きいと上述しましたが、筆者は、この動きは円高一服というような短期的なものではなく、より中長期にわたる円買いのピークアウトだと考えています。
その背景は、唯一の円買い材料といっても過言ではない「日米の金融政策の方向感が真逆」というロジックが修正を迫られているからです。金融政策の方向感が真逆であることに変わりはありません。問題は、その進展速度が想定よりも緩慢になるということでしょう。
FOMCのドットチャートで示された2025年の利下げ見通しは年末までの累計で1%。ざっくり四半期ごとに0.25%の利下げという示唆なら、そのペースは市場の期待よりゆっくりです。今回の大幅利下げは「後手に回らない」ための予防的な措置であり、それによって米国経済は景気後退が避けられソフトランディングの可能性が高まるでしょう。結果として長期金利は上昇し、ドルもサポートされるということになります。