はじめに
公的年金は、65歳を境に金額が大きく違う
公的年金を受け取っている場合はどうでしょうか。
厚生労働省「2022年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、男性の年金受取額の平均は、厚生年金で16万3875円、国民年金で5万8798円です。ただし、本来の年金受給年齢である65歳を境に、受取金額に大きな違いがあります。
年金は60歳から受け取る、繰り上げ受給もできますが、1カ月ごとに0.4%減額され、その金額は生涯変わりません。平均金額を見ると、60~64歳の受取り金額は約9万~11万円。一方65歳以上では約17万円ですから、その差は決して小さくありません。
<厚生年金の平均年金月額(男性)>
「2022年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」より筆者作成
厚生年金は、現役時代の給料によって受取り金額が変わります。そのため、男性が受け取る厚生年金は女性より高額になる傾向ですが、国民年金は男女差がほとんどありません。とはいえ、65歳以降に受取り金額が増えることは厚生年金と同様です。
<国民年金の平均年金月額>
「2022年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」より筆者作成
このようなデータを見ると、公的年金だけで暮らすことが不安になってくるかもしれません。60代の家計収支がどのようになるのか、気になるところです。
東京都の60代独身世帯の1カ月の支出額は約17〜18万円
総務省の「2019年全国家計構造調査(旧全国消費実態調査)」によると、東京都の60代単身者の1カ月の平均支出は、仕事をしている人で約17万7000円、仕事をしていない人で約16万9000円 です。支出額は、仕事の有無によって大きな差がありません。
そのうち、東京等の首都圏では家賃が大きなウエイトをしめます。公益財団法人不動産流通推進センターがまとめた「2023不動産統計集」 によれば、東京の賃貸マンションの家賃相場はいぜんとして上昇傾向です。
2023年3月のデータで は、ワンルームの家賃平均は7万6765円(6万5754円~8万7269円)、1LDK~2DKの家賃平均は8万8171円(7万6069円~10万2194円)となっています。
支出が17万5000円だとすると、そのうち、7万円が家賃ではやりくりが厳しそうですが、東京都の持ち家率は45.0%と全国で最も低いので、賃貸住まいとして考えます。住宅費を含めた1カ月の消費支出の内訳は、両調査をもとに考えると次のようになります。
60代男性単身者の1カ月の平均支出額(首都圏)
各データをもとに筆者作成
この支出をまかなうために、どのような収入があるのか見てみましょう。東京都の全世帯の平均をとっているので、勤め先収入の金額は、さきほどの賃金データとは異なります。
<東京都の60代一人暮らし世帯の主な収入(円)>
「2019年全国家計構造調査(旧全国消費実態調査)」を元に筆者作成
無職世帯は勤め先からの収入はありませんが公的年金が高額で、保険金収入も多くあります。保険金は、民間保険で加入している個人年金保険や、企業年金保険です。
これらの収入のほかに、貯蓄を取り崩すなどして、家計をやりくりしています。