はじめに

公的年金財政の健康診断といわれる「財政検証」が5年ぶりに行われました。それを受けて、2025年に年金制度の改正が予定されています。2024年7月に厚生労働省が発表した改正内容の中でも「遺族年金の改正案」はSNSで大炎上しました。


遺族年金とは? 現在のルールを知っておこう

まず、遺族年金について簡単に説明しましょう。遺族年金は、家族を支えてきた人(多くの場合、夫)が亡くなったとき、残された家族の生活を支えるためのお金です。また、遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類があります。

遺族基礎年金は、子どもがいる場合に配偶者や子どもを対象に子どもが18歳になる年度末まで定額支給されます。いっぽうで遺族厚生年金は、会社員が死亡した場合などに収入に応じて支給額が決まります。今回の改正は、遺族厚生年金が対象になることを知っておきましょう。

現在の制度下で、遺族厚生年金をもらえる配偶者(年収要件あり)の条件は以下の通りです。

・子どもがいない30歳未満の妻は5年間の支給
・子どもがいる妻、または30歳以上の妻は原則生涯支給
・55歳以上の夫(ただし、支給は60歳から)は原則一生涯支給

これらのルールは昭和型の家計「男は仕事、女は家庭」を前提に作られています。夫を亡くした妻の保障が、妻を亡くした夫に比べてとても手厚く、問題提起されてきました。

なぜ遺族厚生年金の改正が話題になっているの?

では、なぜ今、遺族年金の改正が検討されているのでしょうか。最大の理由として考えられるのは、 共働き世帯が増加し、昔のように「夫に養ってもらう」という社会ではなくなりつつあるからです。

こうした変化に合わせて、今回の改正案の目玉として「30歳以上で夫を亡くした妻の受給期間も5年間、妻を亡くした夫は55歳未満で5年間の受給」が示されたのです。夫の年齢制限が大きく解除されたことは喜ばしいものの、妻の受給期間が一生涯から5年に短縮されてしまう!これでは多くの女性が困窮する!といった批判や不安がSNS上で拡散されました。

実は、筆者のところにもお客様から不安な声が寄せられています。「50代夫婦です。夫はずっと会社員で厚生年金保険料を納めてきました。私は扶養内のパートで年収100万円ほどです。夫に万が一の時、私は遺族年金を5年間しかもらえなくなってしまい、しかも、夫の厚生年金保険料は払い損になってしまうのでしょうか?」

これには誤解されている部分も多いので、まずは改正案を正しくお伝えしたいと思います。

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