はじめに

投資信託は、今では1万円どころか100円で購入できる投資商品になりました。「手軽に投資ができる」ことをアピールする少額投資ですが、はたしてそれは資産形成につながるのでしょうか。


損しても大けがしないのが少額投資のメリット

投資信託に限ったことではなく、同じことは株式にいえるのですが、ここ数年、「投資の民主化」というか、とにかく誰でも手軽に投資できることをアピールしたいからなのか、少額資金でも投資できることを前面に打ち出す傾向が見られます。

先日、東京証券取引所が1単元あたりの株数を、現行の100株から1株にすることを検討すると公表したのも、その一環でしょう。確かに、株価が5万円の銘柄でも、1株で投資できれば5万円です。それが仮に半分になったとしても、損失額は2万5000円。ダメージはそれほど大きくありません。

少額投資には、このように実際に損失を被ったとしても、損失額そのものを小さく抑えられるメリットがあります。5万円が半分になったとしても損失額は2万5000円ですが、もし500万円が半分になったとしたら、損失額は250万円。すぐには立ち直れない損失額です。

40年積み立ててたったの4万8000円?

投資信託はかつて、最低1万円から購入する投資商品でした。それが積立投資に関しては5000円からにする投資信託会社が現れ、そのうち1000円からの購入が可能になり、現在は積立であれば100円からできる、というインターネット証券もあります。

ここまで少額化されれば、もう誰にでも投資できますし、損をしたとしてもまったく怖くないと思うのですが、だからといって少額投資を長期間続けたとしても、一向に資産が増えないことを理解しておく必要があります。

たとえば100円を1年間、毎月積み立てたところで、1年間で積み上がる元本は1200円です。ということは、40年間続けたとしても4万8000円。それでもゼロよりはましという声もありそうですが、40年もの年月を費やして築き上げた資産が、たったの4万8000円というのは冗談のような話です。4万8000円なんて、1カ月分の生活費にもならないでしょう。

つまり、少額投資は、価格変動商品を保有することに慣れるという意味では「あり」なのですが、資産形成には「何の役にも立たない」ことを理解しておきましょう。

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