はじめに

③面している私道の所有権がない

道路には必ず所有者が存在します。そして、例えば国や県、市町村が所有している国道、県道、市道などは公道、一般個人が所有している道路は私道(しどう・わたくしどう)と呼ばれます。

公道は名前の通り、公の道として、通常は誰でも自由に通行することができます。一方、私道の場合は、原則としてその道路所有者の許可がなければ、自由に通行することはできません。もちろん、日常生活で、いちいち通行する道路が公道か私道かを確認することはありませんし、無意識に私道を使っていることもあるでしょう。ただし、例えば「住民以外通行禁止」といった看板が立っていたりすれば、そこを通行することは許されません。

これを踏まえると、例えば所有している土地に面している道路が私道の場合で、その道路を近隣住民と共有して、自分も所有者の一人になっていれば、いうまでもなく自由に通行することができます。しかし、もし道路の所有者でない場合には、自分の敷地に往来するために、常に他人の道路を通行させてもらうことになるため、ある日突然「この私道は使用するな」といわれてしまう可能性もゼロではないのです。

なお、今挙げた例のケースで、私道の通行を禁止されることで、自分の敷地に往来することがまったくできなくなる場合も起こり得るため、民法では私道所有者にとっての損害が最少になる範囲で通行することができる、囲繞地通行権という権利があるため、直ちに八方塞がりになることはありません。ただし、その場合でも私道所有者へ償金を払う必要があるとされているほか、私道の通行禁止を通告されるような状況では、少なくとも良好な関係性を保てる状況とはいえず、民法上の権利があるにしても、自分の私道を通行する場合と同じ自由度が保証されているとはいえないでしょう。

また、私道の所有権がない場合のもう一つのリスクとして、通行だけでなく、水道などのライフラインにも大きく影響が生じる場合があります。例えば、敷地内に水道を引き込みたいとき、ほとんどの場合は道路の下に水道管が埋設されているため、その水道管から敷地内に水道管を引き込む工事が必要です。そうすると、その工事のために他人所有の道路を掘削する必要が生じるものの、所有者からその掘削の承諾が得られなければ、水道管を引き込めないことになってしまいます。

こういった諸リスクがある点で、私道の所有権のない道路に面している不動産も、その価値に大きく影響する場合があるのです。

道路は侮れない

いかがでしたか。ここで紹介した道路にまつわる注意点は、ほんの一部です。道路は、さまざまな法律や近隣関係等によって、不動産の利用に大きな制約が課される場合があり、不動産会社も、そのようなリスクがないか、慎重に調査をしたうえで取引をしています。そして、何らかのリスクがあると判断された場合には、不動産の利用価値が毀損しているとみなされ、”ほぼ同じ環境にある隣地と、数倍以上の価格差が生まれる”ようなことも起こりえるのです。

その意味で、不動産を売却する人は、今のうちにリスクがないかを点検し、それを解消できる策がないか検討することは、資産価値を大きく向上させることに繋がります。また、不動産を購入する人も、一見して何の変哲もない道路のように見えた場合でも、その道路によって思わぬ制約やリスクを負うことがないか、専門家の助言なども参考に、慎重に確認をしていくことが重要といえるでしょう。

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